現代の企業では、SalesforceやMicrosoft 365、Google Workspaceなど、複数のクラウドサービスを同時に利用するのが当たり前になっています。 しかし、利便性と引き換えに、セキュリティのリスクも増加しているのが実情です。 シャドーITと呼ばれる承認されていないクラウドサービスの利用、データ漏洩、設定ミスによるアクセス権限の過剰な付与など、課題は多くあります。
そこで注目されているのが「CASB(Cloud Access Security Broker)」です。 CASBは、組織のセキュリティ部門とクラウドサービス間に配置されるセキュリティソリューションで、クラウド利用を可視化し、保護し、管理する仕組みです。 本記事では、CASBの基本的な考え方から必要とされる背景、導入メリットについて、わかりやすく解説します。
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CASBが必要とされている背景
クラウドサービス利用の爆発的増加
現在、企業が利用するクラウドサービスの数は急速に増加しています。 営業活動用のCRM、人事管理、経理システム、チームコミュニケーションツールなど、業務のあらゆる場面でSaaSが活用されています。 ある調査では、企業が平均で数十個以上のSaaSを利用しているとも報告されています。
シャドーITの蔓延
シャドーIT(Shadow IT)とは、企業のIT部門の承認を得ないまま、従業員が勝手にクラウドサービスを利用する現象のことです。 「仕事を効率化するために」という善意の理由から、ファイル共有サービスやプロジェクト管理ツール、チャットアプリなどが無許可で導入される傾向があります。 IT部門が把握していないため、セキュリティリスクが高まります。
データ漏洩リスクの増加
クラウドサービスはインターネット経由でアクセスされるため、データが複数の場所に分散します。 従業員がうっかり共有設定を間違えたり、マルウェアに感染したデバイスからアクセスされたりすると、企業の機密情報が漏洩する危険性があります。 特に個人情報や顧客データを扱う企業にとって、このリスクは重大です。
アクセス権限の管理の複雑化
複数のクラウドサービスを利用する場合、各サービスごとに異なるアカウント管理やアクセス権限の設定が必要になります。 異動や退職時にすべてのサービスから確実にアクセス権を削除することは困難になり、不要なアクセス権が残り続けるリスクが生じます。
CASBとは:基本的な仕組み
定義
CASB(Cloud Access Security Broker)は、ガートナーが2012年に提唱したセキュリティ概念です。 ユーザと複数のクラウドサービスプロバイダーの間に配置され、クラウドへのアクセスを仲介する役割を果たします。 ユーザの動作を可視化し、セキュリティポリシーを適用し、脅威から組織を保護するセキュリティソリューションです。
配置モデル
CASBにはいくつかの導入形態があります。 ファイアウォールに近い場所に配置する「Forward Proxy型」、クラウドサービス側に配置する「API型」、両者を組み合わせた「Hybrid型」などです。 企業の環境やセキュリティ要件に応じて、最適なモデルが選択されます。
CASBの4つの主要機能
1. 可視化(Visibility)
CASBは、組織内でどのクラウドサービスが利用されているのか、誰がどのようにアクセスしているのかをリアルタイムで把握します。 承認されていないアプリケーションの検出も可能です。 この可視化により、経営層やIT部門は、クラウド利用状況を正確に把握できるようになります。
2. データセキュリティ(Data Security)
データ損失防止(DLP:Data Loss Prevention)機能により、重要なデータがクラウドに送信されるのをブロックしたり、不正なデータ移動を検出したりできます。 クラウドに保存されているデータも継続的に監視し、データ漏洩を防ぎます。
3. コンプライアンス管理(Compliance Management)
企業のセキュリティポリシーや業界の規制要件(GDPRやPCI DSSなど)に基づいて、クラウドサービスの利用が準拠しているかを定期的に確認します。 不適切なアクセスや設定ミスを自動検出し、アラートを発行します。
4. 脅威防御(Threat Prevention)
マルウェアの検出、異常なアクセスパターンの認識、リスクのある共有設定の検出など、多層的な脅威防御機能を提供します。 セキュリティイベント発生時には、リアルタイムでブロックや警告を実施できます。
CASBを導入するメリット
シャドーITの可視化と制御
まず、承認されていないクラウドサービスの利用が明らかになります。 リスクの高いサービスについては、利用を禁止するなど、適切な制御が可能になります。
セキュリティポリシーの一元管理
複数のクラウドサービスに対して、統一されたセキュリティポリシーを適用できます。 個別のサービス設定の手間が減り、運用負荷が軽減されます。
コンプライアンス対応の効率化
定期的な監査やレポート作成が自動化されるため、規制対応の時間と労力を削減できます。
インシデント対応の迅速化
脅威検出が自動化されるため、セキュリティインシデントの発生に素早く対応できます。
CASBと他のセキュリティソリューションとの違い
CASBとSWG(Secure Web Gateway)の違い
SWG(Secure Web Gateway)はWebアクセス全般のセキュリティを管理するのに対して、CASBはクラウドサービスの利用に特化しています。 CASBはAPIを通じてクラウドサービスと連携し、より詳細な監視と制御が可能です。
CASBとDLP(Data Loss Prevention)の違い
DLPはデータ漏洩防止に特化していますが、CASBはデータセキュリティ以外にも可視化やコンプライアンス管理など、より包括的な機能を備えています。
リモートワークとCASBの関連性
リモートワークが一般化した現在、従業員が様々な場所からクラウドサービスにアクセスします。 通常のオフィス環境と異なり、セキュリティが低下する傾向があります。 CASBは、リモートワーク環境においても、一貫したセキュリティポリシーの適用を実現し、アクセス制御をより厳密に管理します。
また、リモートアクセス用の固定IPアドレスを使用することで、さらなるセキュリティレイヤーを追加できます。 例えば、特定の固定IPアドレスからのアクセスのみを許可するといった設定が可能になり、より安全なアクセス環境を実現できます。
CASBの導入時の注意ポイント
既存システムとの統合
現在利用しているクラウドサービスやセキュリティソリューションとの統合性を確認することが重要です。 APIサポートの有無や統合の難易度を事前に確認しましょう。
ユーザ教育の実施
CASBの導入により、セキュリティポリシーが厳しくなる可能性があります。 従業員への教育を十分に行い、ポリシーの必要性を理解してもらうことが円滑な導入の鍵となります。
段階的な導入
いきなりすべてのセキュリティ機能を有効にするのではなく、段階的に導入し、運用のコツを習得することが望ましいです。
コスト管理
CASBソリューションのコストは、利用するクラウドサービスの数やユーザ数によって変わることが多いです。 事前に正確な費用見積もりを取得することが重要です。
クラウド利用が増える企業への提案
クラウドサービスの利用が急速に増えている企業では、セキュリティ対策の抜本的な見直しが必要です。 CASBは、シャドーITの可視化からデータ漏洩防止、コンプライアンス対応まで、多くの課題に対応できるソリューションです。
特に、以下のような企業にはCASBの導入を強く推奨します。
- クラウドサービスの利用数が増加し続けている企業
- 複数部門で異なるクラウドサービスが導入されている企業
- 顧客データや機密情報を扱っている企業
- 海外展開を検討しており、多様なセキュリティ要件への対応が必要な企業
- リモートワークを推進している企業
CASBを導入することで、クラウド利用の利便性を損なわずに、セキュリティを大幅に向上させることができます。
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