地方自治体の情報システムを「自前運用」(オンプレミス、自庁設置型)で維持するべきか、それとも国が推進する「ガバメントクラウド」(政府クラウド)へ移行すべきか――多くの自治体が直面する課題です。
国は2025年度末(令和7年3月末)までに基幹業務システムを標準準拠システムへ移行することを法律で義務付け、政府クラウド活用をその手段として努力義務としています。
各自治体はコストや運用、人材の問題を抱えつつ、この大きな方針転換に対応しなくてはなりません。
本記事では、自前運用と政府クラウドそれぞれのメリット・デメリットをコスト、運用負担、セキュリティ、拡張性、障害対応、ベンダーロックイン、住民サービス連携といった観点で整理します。
さらに、国の標準化+クラウド化方針やクラウド先行事例(加古川市、枚方市、会津若松市など)にも触れ、最後に自治体ごとの状況に応じた選択のポイントを考察します。
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コスト比較:導入・維持費用の違い
- 自前運用(オンプレミス): 自庁内にサーバーやネットワーク機器を設置する場合、初期導入にハードウェア調達や庁舎内設備整備の費用がかかります。 システム更改サイクルで数年ごとに機器更新費用が発生します。
複数自治体でコストを分担する仕組みがないため単独負担が大きく、特に小規模自治体には財政的負担となります。
一方、自前運用で既存資産を活用していれば短期的には追加コストを抑えられるケースもあります。
しかし老朽化した機器の維持や保守契約にも継続的な経費がかかり、運用コストは年々増大しがちです。
- ガバメントクラウド: 政府クラウドではサーバーやOS、基幹業務アプリを複数機関で共同利用するため、各自治体ごとにインフラを整備する必要がなくなります。
その結果、従来オンプレで必要だったサーバー機器調達費用やデータセンター維持費を大幅に削減可能です。
また、自治体ごとに行っていたサーバ監視や機器メンテナンスもクラウド事業者に任せられるため、運用コスト負担も軽減できます。
国は標準準拠システム移行で「2018年度比で少なくとも3割の経費削減」を目標に掲げています。
実際、会津若松市では基幹業務システムを政府クラウドへ移行しコスト削減を図るとしています。
ただし注意点もあります。
先行導入自治体や見積もり段階の自治体からは「移行によってコストがむしろ増加した」ケースも報告されています。
特に初期移行時にベンダー費用が想定以上に高額となり、短期的にはコスト増となる懸念も指摘されています。
国も2025年度以降のクラウド利用料負担を自治体に求める予定であり、長期的に見るとクラウド活用で効率化しつつ費用対効果を検証する姿勢が重要です。
運用・保守の負担比較
- 自前運用: 自庁内でシステムを運用する場合、自治体自身(または地元ベンダー)が日々の運用管理を行う必要があります。
サーバー稼働監視、バックアップ取得、セキュリティパッチ適用、障害発生時の復旧対応など、専門的人材と24時間対応体制が求められます。
人員不足の自治体では担当職員に過度な負担がかかり、運用の質や迅速な障害対応に不安が残ることもあります。
また複数の業務システムを抱える自治体では、システムごとに異なる機器やソフトの保守契約管理が必要で、運用管理の手間が大きいです。
- ガバメントクラウド: クラウド環境ではインフラ層の運用は基本的にクラウド提供事業者が担います。
自治体側でサーバーやストレージ装置そのものを管理・保守する必要がなくなり、人的負担が大幅に軽減されます。
例えばシステムの監視や障害対応についてもクラウド事業者側で自動化・集約管理されているため、各自治体ごとに担当者を張り付かせる必要はありません。
アップデートやセキュリティ対策もサービス側で行われるため、自治体職員は本来業務に専念できます。
ただし、クラウド利用に伴う新たな業務(ベンダーとの契約・調整、クラウド上での設定作業など)は発生します。
また、クラウドに移行したとはいえ全てを任せきりにはできず、システム設定やデータ管理ポリシー策定など自治体自身が関与すべき運用も残るため、IT担当者のスキル向上は引き続き重要です。
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セキュリティの違い
- 自前運用: 自治体自前のシステムでは、情報セキュリティ対策のレベルは自治体ごとに様々です。 大規模自治体では専門部署を設け堅牢な対策を講じている場合もありますが、小規模自治体では限られたリソースで対応せざるを得ず、セキュリティにばらつきが生じていました。
オンプレミスではネットワーク境界でのファイアウォールやウイルス対策、物理的なサーバ室の入退室管理まで含め、すべて自治体側で実施・維持しなければなりません。
高度な標的型攻撃やランサムウェアへの対策も各自治体任せとなり、結果として安全性に地域差が出る状況が課題でした。
- ガバメントクラウド: 政府クラウドは国が利用する高いセキュリティ基準を満たしたクラウド環境上で提供されます。
クラウドサービス自体がISMAP(政府のクラウド安全性評価制度)適合の事業者のみ認定されており、データ暗号化やアクセス制御、監視体制など厳格なセキュリティ対策が施されています。
クラウド上のセキュリティパッチ適用等はサービス提供事業者が基本的に代行するため、自治体個別の対応漏れリスクも低減します。
また、各種データは堅牢なデータセンターに保管されるため災害時のリスクも低減します。
例えば地震・水害等で庁舎が被災しても、クラウド上のバックアップによりデータ消失を防ぎ、他拠点から業務継続が可能です。
もっともクラウド側の対策に過信せず、自治体としても職員の情報セキュリティ教育やアクセス権限管理の徹底など取り組みは引き続き重要です。
システム拡張性と障害対応
- 自前運用: オンプレミス環境では、利用者数の増加や新業務の追加に応じてハードウェア増強やシステム拡張が必要になります。
あらかじめピーク時容量を見越してサーバーやネットワークを調達するケースが多く、平常時にはリソースが余剰となりコスト非効率になりがちです。
一方で想定以上のアクセス増があると現行設備では処理が追いつかず、住民サービスに支障をきたす恐れもあります。
障害対応についても、自庁システムの場合はトラブル発生時に自治体自身で原因切り分けや復旧対応を行わねばなりません。
ベンダー保守を結んでいても駆け付けや部品交換に時間を要する場合があり、災害時に庁舎内システムがダウンすると代替が利かず業務停止リスクが高いです。
- ガバメントクラウド: クラウドサービスは必要に応じてリソース(CPU、メモリ、ストレージ容量等)を柔軟に増減できるのが大きな利点です。
例えば年度末など特定時期にアクセス負荷が増す場合は一時的にサーバー能力を追加し、閑散期には縮小してコストを抑える、といった弾力的運用が可能です。
このスケーラビリティにより、住民からのオンライン申請急増や新サービス開始にも迅速に対応できます。
また大規模災害に備えデータセンターを複数地域に冗長化する設計が取られており、一箇所で障害が発生してもサービス継続しやすいメリットがあります。
障害対応もクラウド事業者側で24時間365日監視・自動復旧が図られるため、小規模自治体でも高水準の可用性を享受できます。
ただしクラウド利用時はネットワーク経由のアクセスとなるため、庁舎~クラウド間の回線障害時には影響を受けます。
自治体専用回線やVPNでバックアップ経路を用意する、オフライン手続きの代替手段を用意するなどのBCP対策は依然必要です。
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ベンダーロックインのリスク
- 自前運用: 従来、自治体ごとに個別に構築されたオンプレミス基幹系システムは、特定ベンダーのパッケージやカスタマイズに深く依存しがちでした。 一度導入したシステムに独自改修を重ねるうちに他社製品への置き換えが難しくなり、ベンダーロックイン(特定業者依存)に陥る自治体も少なくありません。
契約更新のたびに高額な費用提示を受けても他に代替がなく、やむを得ず継続発注するケースが課題となっていました。
自前運用でベンダーを変更するには、既存システムからのデータ移行や新システム再構築などハードルが高く、結果としてベンダー依存から抜け出しにくい現実があります。
- ガバメントクラウド: 政府クラウドでは国があらかじめ調達したクラウド基盤(2025年時点でAWS、Azure、GCP、Oracle Cloud、さくらのクラウドの5種類)上に、複数の民間事業者が開発した標準準拠アプリケーションが提供されます。
自治体はゼロから独自開発する必要はなく、用意された中から選択して利用できます。
複数ベンダーによる競争環境が用意されており、特定の1社だけが独占しない仕組みです。
このため従来よりベンダーロックインの緩和が期待できます。
実際、標準化された仕様により他ベンダー製品への乗り換えもしやすくなる想定です。
もっとも注意すべきは、新たにクラウド基盤自体へのロックインが発生しうる点です。
選択できるクラウド事業者は認定された数社に限られ、いったん特定クラウド環境に最適化した設計にすると、別環境へ移るには再対応が必要です。
また標準準拠システムとは言え細かな設定や拡張部分でベンダー依存が残る可能性もあり、将来の柔軟性を確保するため契約条件の確認やデータの可搬性に留意する必要があります。
住民サービス連携への影響
- 自前運用: 従来のオンプレミス型自治体システムは、それぞれ独立して構築されてきた経緯から他システムや外部サービスとのデータ連携が容易でない場合がありました。
例えば住民基本台帳システムと他の福祉系システムとの連携、庁内システムとマイナポータル等国の提供するサービスとの接続にも個別対応が必要でした。
その結果、住民がオンラインでワンストップ手続きする際に自治体ごとに対応状況が異なったり、同じ情報を何度も入力させる「縦割り」の弊害が指摘されてきました。
また各自治体がバラバラの仕様では、民間企業が提供する市民向けアプリとの連携開発も非効率でした。
- ガバメントクラウド: 政府クラウド移行の重要な目的の一つが業務の効率化と住民サービス向上です。
クラウド上で提供される標準準拠システムは全国どこでも共通仕様で一定の品質が担保されているため、例えば引っ越し時の異動届オンライン申請や各種証明書交付サービスを全国統一的に展開しやすくなります。
また、政府クラウド上でデータが一元管理されることで庁内外のシステム連携が容易になります。
自治体間で住民情報や税情報を連携して利活用するといった取り組みも技術的に進めやすくなるでしょう。
標準APIの整備により、民間のスマホアプリやWebサービスと自治体システムとのデータ連携も促進される見込みです。
例えば先進自治体では、オンライン申請ポータルやAIチャットボットを住民サービスに導入し、24時間自宅から手続き可能な環境を整えています。
政府クラウド基盤に乗せることでこれら新サービスとの親和性が高まり、自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速できるでしょう。
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国の標準化方針とクラウド移行事例
国は「デジタル・ガバメント実行計画」(2020年12月閣議決定)で、2025年度までに全自治体の基幹業務システムを標準化しクラウド移行する方針を示しました。
これを受けて2021年にデジタル庁が発足し、自治体ごとの17業務(後に20業務)仕様の統一と政府クラウド環境の整備が進められています。
標準準拠システムへの移行期限は原則2025年度末ですが、ベンダーのリソース不足等で遅れる場合は国が支援しつつ概ね5年以内(2030年頃)を目標に移行完了させる計画です。
クラウド移行は努力義務ではあるものの、移行期間が短いこともありほとんどの自治体が政府クラウド移行を目指す見通しとされています。
すでに一部の自治体では先行して政府クラウドへの移行を進めています。
例えば兵庫県加古川市や大阪府枚方市は、デジタル庁の「ガバメントクラウド早期移行団体」に採択され、国の支援のもとで基幹系システムのクラウド化検証を行う先行自治体の一つです。
福島県会津若松市では新庁舎開庁を契機に2025年度内に住民記録や税など多数の基幹系システムを政府クラウドへ移行する計画で、既に業務標準化やネットワーク整備を進めています。
同市はクラウド移行によりコスト削減とセキュリティ強化を図ると市政だよりで公表しており、DX(デジタル改革)の一環として24時間オンライン手続きや窓口業務の効率化など住民サービス向上にも取り組んでいます。
これら先行事例からは、クラウド移行自体は決して容易ではないものの、国の支援策(財政支援や手順書提示)を活用しつつ人員不足の中で知見を共有し合う動きが見られます。
移行済み自治体からは「想定よりコストが増えた」「何から手を付けるべきか戸惑った」といった声も聞かれ、クラウド化の理想と現実のギャップに直面しているのも事実です。
国はそうした声に対応すべく、2025年度から地方交付税措置や基金設置による財政支援策を講じると発表しています。
また、自治体職員向け研修やベンダーとのマッチング支援なども進められており、全国的なクラウドシフトを下支えしています。
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どんな自治体・条件でどちらを選ぶべきか?
以上を踏まえ、自治体システムを自前運用と政府クラウドのどちらにすべきか検討する際のポイントを整理します。
- 小規模自治体・老朽システムを抱える自治体: 政府クラウド移行による恩恵が大きいと考えられます。 初期費用負担を抑えつつ最新の標準システムを導入でき、セキュリティや運用監視もアウトソースできるためです。
クラウドで他団体と共同利用することでコスト削減やDX推進効果も得やすく、限られた職員で広範な業務を担う自治体ほどクラウド化のメリットが勝るでしょう。
- 政令市や大規模自治体: 自前でIT部門を抱え高度なシステム運用が可能なケースもあります。
住民ニーズに合わせて独自にカスタマイズしたサービスを提供してきた自治体では、画一的な標準システムへの移行に慎重になる場面もあるでしょう。
当面は自前運用を維持しつつ周辺業務からクラウド活用を進める「ハイブリッド構成」も一案です。
汎用業務はクラウド移行し、特殊な業務はオンプレミスで残すことで、徐々に負担軽減を図るアプローチです。
- 特殊なセキュリティ・機密要件: 高度なセキュリティ要件や機密情報を扱うシステムについては、政府クラウドの対象外となっているケースも注意が必要です。
標準化20業務以外の分野や、特定秘密を含む情報を扱うシステムは引き続きオンプレミスで別管理とする必要があります。
総じて、現在の国の方針や技術トレンドを鑑みれば「新規にオンプレミス環境を構築する」選択肢を取る自治体は今後減少していくと考えられます。
多くの自治体にとっては政府クラウド移行が中長期的に見てコスト・利便性で優位に立つ可能性が高いからです。
もっとも、各自治体の置かれた状況(財政事情、職員スキル、既存契約、地域特性)によってベストな移行計画は異なります。
まずは現行システムの棚卸しと将来像の明確化を行い、必要に応じて専門家の支援も得ながら、自前運用とクラウド活用のバランスを検討すると良いでしょう。
最後に、政府クラウド等を活用する際に見落とけないポイントとして庁外からの安全なアクセス方法があります。
クラウドに移行すると職員がインターネット経由で業務システムにアクセスする場面が増えますが、同時にセキュリティ確保も重要です。
その文脈で次章では「ロリポップ!固定IPアクセス」というサービスを紹介します。
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ロリポップ!固定IPアクセスで庁外からセキュア接続
「ロリポップ!固定IPアクセス」は、GMOペパボ社が提供する固定IPアドレス付与型のVPNサービスです。
簡単に言えば、職員が自宅や出先からインターネット経由で庁内ネットワークやクラウド上の自治体システムにアクセスする際に、常に特定の固定IPアドレスから接続することを可能にするサービスです。
これを利用すると、自治体のシステム側でアクセス元IPアドレスを制限し、許可した固定IP以外からの接続をブロックできます。
つまり、庁外からのリモートアクセスに手軽にIP制限によるセキュリティ強化を実現できるのです。
ロリポップ!固定IPアクセスの特徴としてまず挙げられるのは、その手軽さと低コストです。
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- 即日導入: 利用申込はオンラインで完結し、煩雑な事業者登録も不要。 VPN接続用アプリ(WireGuard)に設定ファイルを読み込ませれば、即日から利用開始できます。
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職員複数名で共有して利用するといった柔軟な運用もできます。
このサービスを活用することで、例えば庁舎外のテレワーク環境や出張先からでも、あたかも市役所内のネットワークからアクセスしているように業務システムにログインできます。
自治体のクラウド環境が庁内IPからの接続に限定されている場合でも、ロリポップ!固定IPアクセス経由なら安全に外部からアクセスを許可できるわけです。
アクセス元を固定IPに絞ることで不正アクセスリスクを低減しつつ、職員の働く場所の柔軟性を高められる点で、ニューノーマル時代の自治体ITインフラを支える有力なソリューションとなっています。
導入メリットをまとめると、ローコストで即日導入可能なため予算や時間の制約が厳しい自治体でも試しやすく、既存のネットワーク構成を大きく変更せずにセキュアなリモートアクセス環境を実現できる点が魅力です。
採用されている「WireGuard」プロトコルは従来型VPNより高速・軽量で、モバイル回線経由でも安定した接続を提供します。
ガバメントクラウドへの移行後も含め、庁内システムへのアクセス制御と職員の利便性向上を両立させる手段として、ロリポップ!固定IPアクセスの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
自治体DXを支えるセキュアなネットワーク環境構築の一助となるはずです。