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RBACとABACの違い:SaaS権限設計で失敗しない考え方

RBACとABACの違い:SaaS権限設計で失敗しない考え方

基礎知識

SaaSの導入が進む中、適切な権限設計がセキュリティと業務効率の両立を左右する重要な要素となっています。 しかし、RBAC(ロールベースアクセス制御)とABAC(属性ベースアクセス制御)という2つのアプローチの違いを正確に理解している企業はまだまだ少ないのが実情です。 本記事では、この2つの権限制御方式の違いを分かりやすく解説し、SaaSの権限設計で失敗しないための考え方をお伝えします。

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RBACとは:ロールベースアクセス制御の基本

RBACの仕組み

RBACは「ロールベースアクセス制御」(Role-Based Access Control)の略称で、ユーザーの職務上の役割(ロール)に基づいてアクセス権限を付与する方式です。 組織内のユーザーを「営業担当者」「人事部門」「システム管理者」といった役割に分類し、各役割に必要な権限をセットで付与します。

具体例:

営業部門の従業員には「顧客データベースの閲覧権限」と「注文システムの操作権限」を付与します。 人事部門の従業員には「給与システムの閲覧権限」と「勤務記録の入力権限」を付与します。 このように、役割に紐付けて権限をまとめて管理するのがRBACの特徴です。

RBACのメリットと限界

RBACのメリットは、権限管理がシンプルで分かりやすいことです。 ユーザー数が増加した場合でも、ロールを定義さえしておけば、新入社員に対して迅速に権限を付与できます。 また、権限の削除や変更も比較的容易です。

しかし、RBACには限界があります。 例えば、営業部門の中でも新入社員とベテラン営業では必要な権限レベルが異なるはずです。 RBACでは基本的に同じロールに属するユーザーに同じ権限を付与するため、より細かい権限制御が難しいのです。 また、プロジェクトベースでの一時的な権限変更や、複数の役割を兼務するユーザーの権限管理も煩雑になります。

ABACとは:属性ベースアクセス制御の進化形

ABACの仕組み

ABACは「属性ベースアクセス制御」(Attribute-Based Access Control)の略称で、ユーザーの属性、リソースの属性、そしてアクセスに関わる環境情報を組み合わせて、きめ細かなアクセス制御を実現する方式です。

ユーザーの属性には以下のようなものが含まれます。

リソース側の属性としては以下のようなものが考えられます。

さらに、環境情報としては以下が挙げられます。

ABACの具体例

医療機関での例を考えてみましょう。 医師Aが患者Bの医療記録にアクセスしたいとします。 ABACでは以下のように制御できます。

「医師である」「かつ」「Bさんの担当医である」「かつ」「勤務時間中である」「かつ」「病院内のネットワークからアクセスしている」という条件がすべて満たされた場合にのみ、アクセスを許可する。

このように、複数の条件を組み合わせることで、非常に細粒度な権限制御が可能になるのです。

RBACとABACの主要な5つの違い

1. 制御の基準の違い

RBACはユーザーの職務上の役割を基準としますが、ABACはユーザー・リソース・環境のあらゆる属性を基準とします。 RBACは「その人は何か」という質問に答える形で、ABACは「その人は何者で、何にアクセスしようとしており、今どのような状況か」という包括的な情報で判断します。

2. 柔軟性の違い

従業員の職務が変わる場合、RBACではロールの割り当てを手動で変更する必要があります。 一方、ABACでは従業員の属性情報を更新するだけで、自動的に権限が変わります。 例えば、営業職から企画職に異動した場合、営業職特有の属性が削除され、企画職の属性が追加されることで、アクセス権限が自動的に調整されます。

3. スケーラビリティの違い

組織が成長するにつれ、RBACではロール数が増加し、権限設定の複雑さが増します。 ABACは属性ベースなため、新しい役割や部門が増えても、既存の属性を組み合わせることで対応でき、より効率的です。

4. セキュリティの厳密さ

RBACは概ね安全ですが、同じロールに属するユーザーに同じ権限が付与されるため、過剰な権限が与えられるリスクがあります。 ABACは最小権限の原則(ユーザーに必要最小限の権限のみを付与する)をより徹底的に実装でき、セキュリティリスクをより低減できます。

5. 実装の複雑さ

RBACはシンプルで実装が容易です。 ABACは複雑なルール設定が必要となるため、実装には高度な技術と設計力が求められます。

SaaS環境での権限設計:RBACとABACの使い分け

クラウドプロバイダーの動向

AWS、Azure、GCPといったメジャーなクラウドプロバイダーはRBACをネイティブにサポートしており、RBACは現在のSaaS・クラウドサービス環境での標準的なアプローチとなっています。 しかし、セキュリティ要件が高まるにつれ、各プロバイダーもABACのサポートを拡充しています。

実務的なハイブリッドアプローチ

実務では、RBACとABACを並用するハイブリッドアプローチが最も現実的です。 以下のような使い分けが推奨されます。

基本的な権限構造はRBACで設計・

部門や職種といった基本的な権限体系はRBACで構築します。 これにより、シンプルで保守性の高い基盤ができます。

セキュリティが重要な領域だけABACを適用・

機密性が高いデータへのアクセスや、管理者権限が必要な操作については、ABACで属性に基づいた厳密な制御を加えます。 例えば、給与情報へのアクセスは「人事部門」という役割に加えて、「給与計算責任者である」「かつ」「監査期間中ではない」という属性条件を追加するといった具合です。

定期的な権限監査と見直し・

RBACとABACのいずれを採用する場合でも、定期的に権限設定を監査し、不要な権限が付与されていないかを確認することが重要です。

SaaS権限設計の失敗を防ぐ3つのポイント

ポイント1. 最小権限の原則を徹底する

ユーザーには、職務を遂行するために必要な最小限の権限のみを付与するという「最小権限の原則」が重要です。 これはセキュリティの基本原則であり、内部不正やセキュリティ侵害のリスクを大幅に低減します。 定期的に権限の棚卸しを行い、不要な権限が付与されていないかを確認しましょう。

ポイント2. アクセス制御だけでは不十分:監視と監査も必須

権限設計が適切に実装されても、実際のアクセスが監視されなければセキュリティは成立しません。 誰が、いつ、何にアクセスしたかを記録し、定期的に監査することで、不正アクセスを早期に検知できます。

ポイント3. 固定IPアドレスによるネットワークレベルのアクセス制限

SaaSの権限設計に加えて、ネットワークレベルのアクセス制限も重要です。 「ロリポップ!固定IPアクセス」などのVPNサービスを利用して、会社指定のIPアドレスからのアクセスのみを許可することで、リモートワークでもセキュアなアクセス環境を実現できます。 固定IPにより、不正アクセスを未然に防ぐ多層防御を構築できるのです。

まとめ:組織に合った権限設計を選択しよう

RBACとABACは、それぞれ異なるアプローチの権限制御方式です。 小規模で権限構造がシンプルな組織ではRBACで充分かもしれませんが、複雑な組織構造やセキュリティ要件が高い領域ではABACの導入を検討する価値があります。

実務的には、RBACを基盤としながら、セキュリティ要件が特に高い領域だけABACを適用するハイブリッドアプローチが最も現実的です。 そして、どちらのアプローチを選択する場合でも、最小権限の原則、定期的な監査、そしてネットワークレベルのアクセス制限を組み合わせることで、強固なセキュリティ体制を構築することができるのです。

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