「ゼロトラストではIPアドレス制限は不要」といった声をセキュリティの現場で耳にすることが増えました。
ゼロトラストセキュリティの登場により、「社内ネットワークだから安全」という従来の前提を捨て、通信元が社内外を問わず信頼しないことを前提に常に検証する思想が広まりつつあります。
その影響で、「ネットワーク(IPアドレス)に基づくアクセス制御は時代遅れだ」「今どきIP制限なんて意味がない」との意見も出ています。
しかし現実には、IPアドレス制限(アクセス元IPによるアクセス可否の制御)はクラウドサービスや社内システムで今も広く使われており、多層防御の一環として有効な場面もあります。
本記事では、ゼロトラストモデルの基本とIP制限の関係を整理し、ゼロトラスト時代になぜ「IP制限不要」と言われるのか、その背景や理由を解説します。
一方で現場で残るIP制限の役割や有効性、企業での多層防御への組み込み方についても触れ、理想論と現実の折衷としてのセキュリティ構成を考察します。
さらに、VPNや固定IPサービスを活用した段階的なゼロトラスト導入策として、ロリポップ!固定IPアクセス(※当社サービス)を例に低コストで実践できる補完的ソリューションをご紹介します。
ぜひ、セキュリティ初心者~中級者の方にもわかりやすい形で、ゼロトラスト時代の現実的なセキュリティ対策を一緒に見直してみましょう。
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ゼロトラストモデルの基本理念とIP制限の関係
ゼロトラストモデルとは、「何も信頼せず、常に検証する」ことを核とする新しいセキュリティ哲学です。
従来の境界型セキュリティ(社内ネットワーク=安全、社外=危険という考え方)を覆し、社内外問わずあらゆるアクセスを疑い、毎回しっかりと認証・検証します。
例えば一度社内ネットワークに入った通信でも、ゼロトラストでは例外なく再認証・再評価を行います。
この「決して信頼せず常に検証する」原則により、内部犯や侵入後の横展開も含め、常にアクセスごとに安全性を確認するのです。
ゼロトラストが強調するポイントの一つに、「物理的な拠点やネットワークに基づく信頼を置かない」というものがあります。
これはつまり、従来は「社内ネットワークからのアクセスなら信頼する」(IPアドレスが社内なら許可)といった境界防御的発想がありましたが、ゼロトラストでは場所やネットワーク(IP)による暗黙の信頼を排除します。
社内LANだろうとVPN経由だろうと、アクセス元がどこであれ “暗黙には信頼しない” のが原則です。
その代わりに、ユーザーのアイデンティティ(ID)やデバイスの状態、認証の有無などに基づいてアクセスを許可するか判断します。
結論から言えば、ゼロトラストは「IPだけで固定的に信頼/不信を決めるべきではない」という意味であり、IP情報自体を活用してはいけないわけではありません。
ポイントは、IPアドレス“だけ”に頼った静的な制御から脱却し、IPも含めた多角的な情報で動的にアクセス可否を判断することです。
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「ゼロトラスト時代にIP制限は不要」と言われる理由
近年「ゼロトラストだからIP制限は無用」との主張が聞かれる背景には、主にセキュリティ技術や働き方の変化があります。
- (1) ネットワーク境界への依存は時代遅れという認識 ゼロトラストの文脈では「ネットワークに基づく制御はもはや通用しない」という考えが広がっています。 もともとIP制限は「社内ネットワーク=安全」という閉域網神話のもとに普及した仕組みでした。
特定のIPアドレス(社内拠点など)“だから”信頼するという考え方は、ゼロトラストの「どんな接続元でも無条件には信頼しない」という思想に真っ向から反するように見えるため、批判されがちです。
- (2) リモートワークの普及でIP制限は不便 テレワークが常態化し「どこからでも仕事」が当たり前になった中で、会社オフィスのIPからしかアクセスできない制限をかけると業務の柔軟性を損ねます。
在宅や出先からアクセスする際、オフィスの固定IPに限定しているとVPN経由で接続しなければならず、運用負荷や利便性低下を招きます。
一斉テレワーク移行でVPN設備が輻輳したり、VPN装置の脆弱性が狙われたりと、従来の「IP制限+VPN」モデルの限界も露呈しました。
- (3) デバイス認証やIDベース認証の台頭 多要素認証(MFA)やシングルサインオン(SSO)などID管理の強化によって「ユーザー認証さえ堅牢なら大丈夫」という考えも広がりました。
特に、クライアント証明書を検証し、登録された会社PCからのアクセスかどうか確認する「端末認証」が普及しています。
わざわざIPアドレスで所在地を縛らなくても、ユーザーとデバイスを厳格認証すれば十分ではないかという主張が出てくるのは、認証技術の進歩が背景にあります。
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現場で残るIP制限の役割と有効性
ゼロトラスト時代でも、現場のセキュリティ担当者がIP制限に期待する役割はいくつか存在します。
- (1) 攻撃の入口を絞る「門番」として有効 IPアドレス制限は、言わばシステムの玄関にかけるフィルターです。 許可された送信元IP以外の通信を門前払いすることで、攻撃者がそもそも認証画面に到達する前にブロックできます。
多層防御の観点から、そもそも世界中どこからでも攻撃対象に接続可能な状態自体がリスクであり、IP制限でアクセス範囲を狭めておくのは理にかなっています。
- (2) 緊急時の迅速な遮断スイッチ IP制限は設定変更が比較的容易な点も利点です。
万一セキュリティインシデントの兆候があった場合、特定のIPブロックや許可IPの限定ですぐにアクセスを遮断できます。
不測の事態でも「ここからしか開けない」という制限がかかっていれば、被害拡大を防ぐ素早い遮断策として機能するのです。
- (3) SaaSの組み込みやすさ IPアドレス制限は多くのクラウドサービスで標準的なセキュリティ機能として提供されています。
サービス側UIで設定するだけで導入できるため、追加コストや専門知識をあまり必要としません。
高度なソリューションは導入ハードルが高いことも多いため、「まずはSaaSのIP制限から」というのは現実的な第一歩になります。
- (4) コストパフォーマンスとユーザビリティのバランス 利用者が限られる管理画面や特権操作系では、安価で強力な防御策になります。
社内でも一部管理者しか触らないような設定画面ならIP制限+VPNで不便が生じるユーザーもごく少数です。
費用も手間も少なく堅牢性を高められるため、ハイリスクだが利用者限定の領域では「認証+IP制限」の組み合わせが現実解となります。
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多層防御へのIP制限の組み込み方
具体的に企業のセキュリティ対策でIP制限を多層防御の一部として組み込む例を紹介します。
- クラウド管理コンソールの保護 主要クラウドサービスの管理者コンソールは、重要度が高く利用者が限られるため、ユーザー認証(MFA必須)+IP制限を併用するケースが多く見られます。 万一管理者アカウントのMFAが突破された場合でも社外からは設定変更等ができないため、被害を防止できます。
- 社内システムへのリモートアクセス 「社用PCから社用VPNに接続し、さらに社用VPNの固定IPアドレスからのみファイルサーバー接続を許可」という二段構えを採用する例があります。
ゼロトラストを理想としつつも、完全移行までの暫定策としてIP制限付きVPNを継続利用する企業は少なくありません。
- APIやサーバー間通信の保護 外部公開しているAPIエンドポイントを持つ場合、トークン認可に加えて接続元IPアドレスのフィルタリングを行うのが一般的です。
仮にAPIキーが流出しても特定ネットワークからでなければ利用されないため、被害を抑制できます。
VPNや固定IPを活用したゼロトラスト補完策
全面移行が難しい場合、既存環境とゼロトラスト的ソリューションを段階的に運用する過程を経ます。
- VPN+固定IPでアクセス元を一本化 各ユーザーのアクセスを一度VPNで集約し、固定IPアドレスから発信させることで、SaaS側で簡易的なゼロトラスト効果を得られます。 全員が事実上同じ場所からアクセスする状態を作れるため、利便性を損ねずに不審な経路からの接続を排除できます。
- クラウド向け条件付きアクセスの活用 Microsoft EntraやGoogle Workspaceの条件付きアクセス機能を使い、「自社の固定IP経由かどうか」をログイン条件に加えることができます。
専用の製品を導入しなくても、既存のクラウド機能と固定IPを組み合わせることで、段階的な強化が図れます。
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ロリポップ!固定IPアクセスで実現するゼロトラスト補完施策
ゼロトラストの補完策として、手軽に固定IPアドレス経由のアクセス環境を整える「ロリポップ!固定IPアクセス」の活用イメージを解説します。
本サービスは月額539円(税込)から利用可能で、WireGuard対応アプリに設定ファイルを読み込むだけで、どこからでも常に同じ固定グローバルIPで通信可能になります。
- クラウドサービスへのアクセス制限 Google WorkspaceやSalesforceの設定で「許可IP」をロリポップ側の固定IPに限定します。 不正な第三者が社員の認証情報を入手しても、許可された固定IP以外からではログインできない二重防御を構築できます。
- 社内システムへの安全なリモート接続 社内システム側でFWやルータ設定の許可IPを当該固定IPのみに限定します。
「社外→VPN→社内固定IP→システム」という経路以外を遮断し、万一VPN情報が漏れてもシステムへの直接アクセスを防ぎます。
- 段階的セキュリティ向上 物理機器の設置や大がかりな再設計が不要で、オンライン契約後すぐに使えます。
まず固定IP化でアクセス経路を制御しつつ、並行してデバイス証明書などの計画を進めるスモールスタートに最適です。
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まとめ
ゼロトラストが掲げる「全てを信用せず常に検証」は基本原則ですが、理想と現実のギャップを埋めるにはバランスを取ったアプローチが重要です。
IPアドレス制限は決して時代遅れの遺物ではなく、ユーザーや端末の強力な認証と組み合わせる多層防御のレイヤーとして、現代でも非常に有効です。
現場の制約とリスクを踏まえ、固定IPサービスなどをうまく活用しながら「ゼロトラスト的だが現実的」なセキュリティ構成を築くことが、安全なビジネス運営につながります。
重要なのは自社の守るべき資産を見極め、今できる最善策を積み重ねていくことです。