複数拠点ネットワークの重要性と課題
IIJの調査によると、店舗や支社など複数拠点でネットワークを利用する企業の53%が「SaaS利用などに不便・制限が多い」と感じており、48%が「通信遅延やトラブルが拠点業務に影響することがある」と回答しました。
さらに「拠点増設にネットワークが柔軟に対応できない」(41%)や「急な新拠点開設スケジュールに対応できない」(39%)といった声もあり、ネットワーク環境がビジネスに与える影響の大きさが浮き彫りになっています。
実際、約51%の企業がこうしたネットワーク上の課題は「ビジネス上の大きな問題になっている」と答えており、複数拠点を結ぶネットワークの見直し・強化は企業経営において急務と言えます。
かつて企業の拠点間を安全に接続する手段としては、拠点同士を直接結ぶ専用回線(リーズライン)が一般的でした。
物理的な専用線は高い秘匿性・信頼性を確保できますが、距離や拠点数が増えるほどコストが非常に高額になるという課題があります。
この専用線の課題を解消するために普及したのがVPN(Virtual Private Network、仮想専用線)です。VPNはトンネリングやカプセル化、暗号化・認証などの技術を用いて、共用のネットワーク上に「仮想的な専用線」を構築し、安全な通信を低コストで実現します。
現在利用されるVPNの方式にはいくつかありますが、中でも企業ネットワークで代表的なのがIP-VPNとインターネットVPNです。以下ではそれぞれの仕組みやメリット・デメリットを解説し、両者の違いを比較します。
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IP-VPNの仕組みとメリット・デメリット
IP-VPN(Internet Protocol-VPN)は、通信事業者(プロバイダ)が提供する閉域IPネットワーク(IP網)上に構築されるVPNサービスです。
拠点に設置したルーター同士の接続にインターネットではなくキャリアの閉域網を利用するため、契約者しか利用できないクローズドなネットワーク環境となり、高い安全性が確保できます。
また通信経路が他ユーザーと物理的に分離されているため干渉が少なく、パケット暗号化のオーバーヘッドも不要なので、安定して高速な通信が行える点も特徴です。
IP-VPNでは多くの場合「MPLS(Multi-Protocol Label Switching)」などの技術が活用されており、効率的なルーティングによって拠点間の高速通信を実現しています。
通信事業者各社から用途や帯域に応じたいろいろなプランが提供されており、自社のニーズに合わせて品質とコストのバランスを選択できる柔軟性もあります。
一方で、IP-VPNのデメリットとしてまず挙げられるのはコストの高さです。
インターネットVPNとは異なり、各拠点でキャリアの閉域網サービスを契約する必要があるため、一般的なインターネット回線契約に比べどうしても費用が割高になります。
加えて契約・開通に時間がかかりやすく、新規拠点の追加にもプロバイダ経由の手続きが必要になるため、ネットワーク構築のスピードや拡張性の面でも制約があります。
またIPネットワークで通信する仕組み上、基本的にIPパケット以外のプロトコルは通せない(※)など技術的な制限もあります。
※IP-VPNで不足する要件(他のレイヤープロトコルの透過など)に対応する手段として、より自由度の高い広域イーサネット等のサービスもあります。
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インターネットVPNの仕組みとメリット・デメリット
インターネットVPNは、名前の通り既存のインターネット回線を利用して拠点間に仮想的な専用ネットワークを構築するVPNです。
各拠点がインターネットに接続できる環境とVPN対応ルーター(またはソフトウェア)さえあれば構築できるため、専用線やIP-VPNに比べて初期導入・回線費用を大幅に抑えることができます。
特別な専用網を使わずインターネット網をそのまま使う手軽さが最大のメリットであり、中小規模の企業でも導入しやすい拠点間通信手段です。
ただし、インターネットVPNは公開された経路を通るという特性上、セキュリティ面と通信品質面でいくつかの注意点があります。
全トラフィックが不特定多数も利用する公衆インターネット上を流れるため、第三者による不正アクセスや攻撃のリスクはゼロではありません。
実際にはVPN機器での暗号化・認証によりデータの盗聴や改ざんを防いでいるものの、インターネット自体が誰でも利用可能なオープンネットワークである以上、IP-VPNのように物理的に閉じた環境と比べればリスクが高い点は否めません。
通信速度や安定性についても、インターネットVPNでは利用する回線のベストエフォート性に左右されます。
時間帯によって回線が混雑すると通信速度が低下したり、経路の状況によって遅延が発生したりする可能性があります。
逆に言えば、必要なときに必要な場所でインターネット回線さえ確保できればVPN接続自体はどこからでも確立できるため、拠点の場所や回線種別に制約されない柔軟性は大きな利点です。
IP-VPNとインターネットVPNの比較 (コスト・セキュリティ・柔軟性)
インターネットVPNでは各拠点のルーター同士を公衆インターネット網を介してVPN接続します。
IP-VPNでは通信事業者の閉域IP網を経由して拠点間を接続し、インターネットには直接露出しないクローズドな経路を通ります。
この違いにより、IP-VPNはより専用線に近い高いセキュリティと通信品質を実現できる一方、コストはインターネットVPNより高くなります。
コスト面では、一般的にIP-VPNはインターネットVPNよりも高額です。
通信事業者の閉域サービスを契約・維持する費用がかかるためですが、その代わりに帯域保証や高可用性などサービス品質(SLA)が提供され、安定したネットワーク環境が得られます。
インターネットVPNは専用網を使わずに済む分コストパフォーマンスに優れ、低予算で拠点間接続を実現できます。
セキュリティ面では、IP-VPNは契約者だけが利用できる閉ざされた網内で通信が完結するため、第三者にデータが触れるリスクが極めて低く安全性が高いです。
インターネットVPNは暗号化などで保護はされるものの、経路自体はオープンなインターネット上にあります。
そのため設定不備による情報漏えいリスクや、通信経路上での攻撃に晒されるリスクはIP-VPNより高く、社内システムにアクセスする際は追加のセキュリティ対策も考慮すべきでしょう。
柔軟性・拡張性の点では、インターネットVPNに軍配が上がります。
IP-VPNは新たに拠点を増やす場合にキャリアとの契約や回線工事が必要ですが、インターネットVPNであれば各拠点がインターネット回線さえ持てばソフトウェア設定でVPN網に参加させることができます。
また、テレワークなど拠点以外の環境から社内ネットワークにアクセスする場合も、インターネットに繋がっていればどこからでもVPN接続できる点は大きなメリットです。
一方でIP-VPNは拠点間通信専用のサービスであり、自宅や外出先から直接IP-VPN網に入ることはできません。
昨今はクラウドサービスの利用増加により、各拠点から直接インターネットへ接続する「ローカルブレイクアウト」構成や、ゼロトラストネットワークへの移行も注目されています。
こうした新しいニーズへの対応には、既存IP-VPN網とインターネットVPNの組み合わせやSD-WANの活用などハイブリッドな設計も求められてきています。
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中小企業やリモートワーク導入企業にはインターネットVPNが柔軟で効果的
上記の比較から、自社の規模や求める要件によって適切な方式は異なります。
拠点数が少なくコストを最優先したい企業にはインターネットVPNが適しており、逆に複数拠点があり安定品質やセキュリティを重視する場合はIP-VPNが有力です。
特に中小企業では、高額な専用ネットワークを敷設せずとも低コストで拠点間通信を実現できるインターネットVPNが現実的な選択肢となるでしょう。
また、フリーアドレスや在宅勤務など働く場所が固定されない企業にとっても、インターネットVPNの柔軟性は大きな魅力です。
前述の通りインターネットVPNであれば場所を選ばず接続できるため、自宅・カフェ・出張先などから社内ネットワークに安全にアクセスできます。
実際、2020年以降の急速なテレワーク普及により「リモートアクセスVPN」は多くの企業で導入が進みました。
従来は拠点間接続だけ考えていれば良かったネットワーク戦略において、各従業員が社外から社内システムに入るケースが一般化したためです。
テレワーク環境を整える上でも、比較的導入ハードルの低いインターネットVPNは有効な手段となっています。
もっとも、インターネットVPNをそのまま利用するだけでは不十分な場合もあります。
例えば社外から社内システムへアクセスする際、接続元IPアドレスを限定して不特定多数からのアクセスを遮断するといった追加対策がよく講じられます。
そのためリモートアクセス用途では、固定IPアドレスを用意して通信元を特定できるようにすることが推奨されます。
しかし一般的に固定IPアドレスを利用するにはプロバイダーとの契約が必要で、個人宅の回線では対応していなかったり料金が高かったりすることがネックとなります。
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クラウド型「固定IP」VPNという選択肢
上記のような課題に対し、近年注目されているのがクラウド型の固定IP付与VPNサービスです。
これはサービス事業者側で固定IPアドレスを持ったVPNサーバーをクラウド上に用意し、利用者はそこに暗号化接続することで擬似的に固定IPアドレスを取得するしくみです。
各ユーザーは自宅やモバイル回線など任意のネット回線からサービスにVPN接続し、そのサービス経由で社内システムやクラウドサービスにアクセスします。
通信はサービス上で集約され特定の固定IPから発信されるため、社内側ではそのIPアドレスだけを許可すれば安全なアクセス制御が可能になります。
例えば「ロリポップ!固定IPアクセス」はそうしたクラウド型VPNの一例です。
このサービスを利用すれば、社員は各自のPC・スマホからインターネット経由でサービスのVPNに接続し、社内システムへは常に決められた固定IPでアクセスできます。
社内のグループウェアやファイルサーバー、あるいはクラウドサービスの管理画面等を社外から利用したいがIP制限がかかっているといった場
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ロリポップ!固定IPアクセスの特徴・メリットまとめ
2025年3月にGMOペパボから提供開始された「ロリポップ!固定IPアクセス」は、前述のクラウド型固定IP VPNサービスの代表例です。
インターネットを経由して安全なVPN接続を確立し、自宅・カフェ・出張先など場所を問わず社内ネットワークに常に同じ固定IPアドレスでアクセスできるようにすることで、不特定多数からのアクセスをブロックするIP制限の仕組みと組み合わせてセキュリティ強化を図れます。
リモートワークの普及により社外からのアクセス元を限定したいニーズが高まる中、プロバイダーの固定IPオプションに依存しない手軽なソリューションとして注目されています。
ロリポップ!固定IPアクセスの主なメリットは次の通りです。
- 低コスト・お試し利用 1固定IPアドレスあたり月額539円(税込)~と国内最安値級の価格で利用でき、初回申し込み時には最大2ヶ月間の無料お試し期間があります。
- 個人でも導入可能 利用にあたって法人契約は不要で、個人・法人を問わずオンライン申し込み可能です。 申し込み手続きも簡単で、事業者登録なども不要なため、その場で手配できます。
- 即日利用開始 申し込み後はすぐに利用に必要な固定IPアドレスと接続情報が発行され、クライアント用アプリを設定すれば即日からサービスを利用開始できます。 緊急で在宅勤務を始める場合などでも、素早く環境を整えられます。
- 複数端末で同時接続 1つの固定IPアドレスを複数人・複数端末で同時に共有利用することも可能です。 拠点ごとやチームごとにIPアドレスを割り当て、メンバー全員が同じIPからアクセスするといった使い方もできます。
- 高速・安全な接続 VPNプロトコルに最新のWireGuardを採用しており、高い安全性と高速な通信を両立しています。 モバイル回線経由でも効率良く動作し、大容量データの送受信も快適です。複雑な設定不要で扱えるため専門知識がなくても導入できます。
- 必要な数だけ柔軟に利用 固定IPアドレス(ライセンス)は1つ単位で契約・追加できます。利用人数や拠点数の増減に応じてライセンス数を柔軟に増減できるため、無駄なコストを抑えてスモールスタートから大規模利用まで対応できます。
このように「ロリポップ!固定IPアクセス」を活用すれば、従来はハードルの高かった
“どこからでも固定IP”
を手軽に実現できます。低コストでセキュアな複数拠点間ネットワークやリモートアクセス環境を構築したい企業にとって、有力な選択肢の一つと言えるでしょう。