「本社のNASにある見積書や図面を、支店や営業所からも開きたい」——拠点が2つ以上になると、ファイル共有の悩みは必ず出てきます。メール添付で受け渡すうちにどれが最新版かわからなくなったり、支店にも別のNASを置いてデータが拠点ごとにバラバラになったりするケースも少なくありません。
この記事では、本社と支店でNASを共有する4つの方法を、メリット・デメリットと向いている規模で比較し、見落としやすいリスクも解説します。
なお、拠点に限らず「外出先や自宅からNASを使う」方法全般を知りたい方は、先にNASに外出先からアクセスする方法の比較をご覧ください。
本社と支店でNASを共有するときの課題
方法を選ぶ前に、次の観点で自社の状況を整理しておきます。
- 支店の規模:数人の営業所か、数十人が常駐する支社か
- 使い方:本社NASのファイルを都度開ければよいか、支店にも同じデータを置きたいか
- 同時編集:本社と支店で同じファイルを同時に更新するか
- 運用する人:VPNルーターやNASの設定・障害対応を担える担当者がいるか
よくあるのが、「支店は3〜4人なのに、本社NASを使うためだけに拠点間VPNを組むのは大げさでは」という悩みです。拠点間VPNは両拠点のVPN対応ルーター、固定IPやDDNS、IPアドレス帯の設計まで必要で、少人数の拠点には負担が重くなりがちです。逆に人数の多い支社で一人ひとりのPCに接続設定をするのも手間がかかります。拠点の規模と使い方で最適な方法は変わるというのが出発点です。
支店の数人だけなら、拠点間VPNを組まずに本社NASへ
「だれリモVPN」は本社の社内LANに専用機器を挿すだけのリモートアクセスVPN。支店のWindows PCから、ポート開放や固定IPの取得なしで本社のNASに接続できます。
だれリモVPNの仕組みを見るNASを複数拠点で共有する4つの方法
本社と支店でNASを共有する方法は、次の4つに整理できます。
| 方法 | 仕組み | データの置き場所 |
|---|---|---|
| ①拠点間VPN | 本社と支店のルーター同士をVPNで常時接続し、本社NASを共有 | 本社NASに集約 |
| ②リモートアクセスVPN | 支店のPCが1台ずつVPNで本社LANに入り、本社NASを使う | 本社NASに集約 |
| ③NASメーカーの同期機能 | 拠点ごとにNASを置き、NAS同士でデータを同期 | 各拠点のNASに複製 |
| ④クラウドストレージ併用 | 共有したいファイルをクラウドストレージ経由で受け渡す | クラウド(+NAS) |
①②は本社NASに集約して支店から使いに行く方法、③④はデータを各拠点や共有の場所へ複製する方法です。
方法1:拠点間VPNで本社NASを共有する
拠点間VPN(サイト間VPN)は、本社と支店のネットワークの出入口にVPN対応ルーターを置き、ルーター同士を暗号化トンネルで常時つなぐ方式です。仕組みやリモートアクセスVPNとの違いは、拠点間VPN(サイト間VPN)の仕組みを解説した記事で詳しく説明しています。
メリット
- 支店のPCは個別設定なしで、エクスプローラーから本社NASを開ける
- 常時接続のため、本社のプリンターや社内システムも支店から使える
- データが本社NASに集約され、最新版の管理やバックアップがシンプル
デメリット
- 両拠点にVPN対応ルーターが必要で、拠点を増やすたびに機器と設定が増える
- 一般に少なくとも本社側に固定IPアドレス(またはDDNS)が必要
- IPアドレス帯の設計や、障害時の切り分けができる担当者が必要
- 大容量ファイルは本社回線のアップロード速度に左右される
向いている規模
常駐人数が多く、本社のシステムやプリンターも常時使う支社向けです。ネットワーク機器を継続的に管理できる体制が前提になります。
方法2:支店のPCからリモートアクセスVPNで本社NASを使う
リモートアクセスVPNは、支店のPC1台ずつをVPNで本社LANにつなぐ方式です。接続すると本社LANの中にいるのと同じ状態になり、本社NASの共有フォルダを開けます。
メリット
- 支店側にVPNルーターが不要で、拠点のネットワーク構成を変えずに始められる
- 在宅勤務や出張先からも同じ方法で本社NASを使える
- 利用者単位で増減でき、データは本社NASに集約されたまま
デメリット
- PCごとに接続設定が必要で、人数が増えるほど管理の手間と費用が増える
- VPN経由のため、社内LANから直接使うより速度は落ちる
- 従来型(本社ルーターをVPNサーバーにする構成)では、本社側のポート開放や固定IPが必要になることが多い
社外から社内のファイルサーバーやNASへつなぐ具体的な手順は、社外から社内のファイルサーバーへ安全にアクセスする手順で解説しています。
向いている規模
数人規模の支店や、テレワークとまとめて解決したい企業向けです。本社LANに専用機器を置くクラウド型を選べば、ポート開放や固定IPの取得も不要にできます。
方法3:NASメーカーの拠点間同期機能を使う
各拠点にNASを置き、NAS同士でデータを同期する方法です。支店のPCは支店内のNASを開くため、日常の操作は社内LANの速度で行えます。主要メーカーの機能は次のとおりです(2026年10月時点の公式情報)。
Synology:Synology Drive ShareSync
Synology Drive ShareSyncは、複数のSynology NAS間でデータを同期するアプリケーションです。Synologyは複数拠点間の同期や、支店へ一方向にファイルを配布する用途を案内しています。公式ヘルプの主なポイントは次のとおりです。
- 同期するすべてのNASにSynology Drive Serverをインストールし、リモート側で共有フォルダを「Team フォルダ」として有効にする
- 接続先のNASはIPアドレスまたはQuickConnect IDで指定する
- 1つのローカル共有フォルダを、複数のリモートNASと同時に同期することはできない
- 同じファイルが同時に変更されると競合が起こる場合があり、競合解決ルールを設定できる
また公式チュートリアルでは、異なるネットワーク上のNASに接続するにはポート転送が必要で、リモート側ルーターでポート6690をNASへ転送するよう案内されています。
Synology:Hybrid Share
Hybrid Shareは、データをSynologyのクラウドストレージ「C2 Storage」に保存し、各拠点のNASにキャッシュを置く仕組みです。公式の技術仕様では、1つのフォルダを最大10台のSynology NASに同時にマウントでき、グローバルファイルロック(1.4.0以降)にも対応します。利用にはC2 OneStorageプランのサブスクリプションと、Btrfs対応・メモリ2GB以上・DSM 7.0.1以上のモデルが必要です。
QNAP:Hybrid Backup Sync(HBS 3)
QNAPのHybrid Backup Sync(HBS 3)は、ローカルのQNAP NASとリモートのデバイスやクラウドストレージの間でデータを同期できるアプリです。同期ジョブは双方向同期(ミラーリング)、一方向同期(ローカル→同期先)、アクティブ同期(同期先→ローカル)の3種類で、同期先がQNAP NASの場合は同期先でRTRRサーバーまたはrsyncサーバーを有効にします。双方向同期では、両側で変更されたファイルの競合ポリシーも選べます。
なおHBS 3には、リモートの攻撃者がデバイスにログインできてしまう脆弱性(CVE-2021-28799)が公表されたことがあり、QNAPはセキュリティアドバイザリ(QSA-21-13)で注意を呼びかけました。同期アプリも常に最新版を保つことが前提です。QNAP NASの外部アクセス方法とリスクは、QNAP NASに外部からアクセスする方法でまとめています。
メリット
- 支店内のNASを使うため、日常の操作が速い
- 拠点間の回線が止まっても、各拠点のNASで作業を続けられる
デメリット
- 拠点の数だけNASが必要で、機器費用と管理対象が増える
- 原則として同じメーカーのNASでそろえる必要がある
- 同時編集が多いと競合が起こりやすい
- NAS同士の接続経路(ポート転送やVPN)の設計が別途必要
向いている規模
各拠点に一定の人数がいて、大容量ファイルを日常的に扱う企業向けです。複数台のNASを管理できる担当者が前提になります。Synology NAS自体の外部アクセス方法はSynology NASに社外からアクセスする方法で解説しています。
方法4:クラウドストレージを併用する
共有したいファイルをクラウドストレージに置き、本社・支店の双方から使う方法です。NASとの併用も可能で、Synologyは「Cloud Sync」で主要なパブリッククラウドとの一方向・双方向同期を、QNAPのHBS 3もクラウドストレージとの同期を案内しています。
メリット
- VPNやポート開放なしで、どこからでも使える
- 拠点を増やしても機器の追加がいらない
デメリット
- 容量や人数に応じて月額費用がかかり、大容量データほど高くなりやすい
- 共有リンクの設定ミスなどで社外に公開されるリスクがある
- NASとクラウドのどちらが正本かのルールが必要
- 社内システムやプリンターなど、ファイル以外の社内リソースは使えない
向いている規模
規模を問わず、「特定のプロジェクトの資料だけ共有したい」「取引先ともやり取りしたい」といった限定的な用途に向いています。
4つの方法を比較:メリット・デメリット・向いている規模
| 項目 | ①拠点間VPN | ②リモートアクセスVPN | ③NASの同期機能 | ④クラウドストレージ併用 |
|---|---|---|---|---|
| データの置き場所 | 本社NASに集約 | 本社NASに集約 | 各拠点NASに複製 | クラウド(+NAS) |
| 支店側に必要なもの | VPN対応ルーター | PCごとの接続設定 | 支店用のNAS | なし |
| 日常操作の速度 | 本社回線に依存 | VPN経由で低下 | 速い(拠点内) | クラウドに依存 |
| 同時編集への強さ | 強い(1か所) | 強い(1か所) | 競合に注意 | サービスに依存 |
| 導入・運用の手間 | 高 | 低〜中 | 中〜高 | 低 |
| 向いている規模 | 常駐人数が多い支社 | 数人規模の支店・テレワーク併用 | 各拠点に一定の人数・大容量データ | 限定的なファイル共有 |
迷ったら、「支店が少人数で本社NASを開ければよい」なら②、「支店も大人数で本社のシステムも常時使う」なら①、「各拠点で大容量ファイルを速く扱いたい」なら③、「一部のファイルだけ共有したい」なら④が目安です。
社外から社内へ、工事不要・ルーター設定不要で安全にアクセス
「だれリモVPN」は専用機器を社内LANに挿すだけのクラウド型リモートアクセスVPNです。機器費用0円・初月無料・契約期間の縛りなしで、IT担当者がいなくても導入できます。
だれリモVPNの詳細・料金を見る拠点間でNASを共有するときに見落としやすいリスク
NASを直接インターネットに公開しない
支店から手軽に使うために、本社NASの管理画面やファイル共有のポートを開放してインターネットへ直接公開するのは避けるべきです。公開されたポートは自動スキャンの標的になり、脆弱性や弱いパスワードを突かれるおそれがあります。SMB(445番ポート)の公開が危険な理由は共有フォルダに外部から安全にアクセスする方法で解説しています。同期やVPNのためにポートを開ける場合も必要最小限にとどめ、ファームウェアを最新に保ちましょう。
同期はバックアップの代わりにならない
同期していると、1か所での削除やランサムウェアによる暗号化も、ほかの拠点へそのまま反映されることがあります。同期は過去の状態に戻すための仕組みではないため、スナップショットや世代管理のあるバックアップを別に用意しておきましょう。
同時編集のルールを決めておく
同期方式で同じファイルを同時に更新すると競合ファイルが生まれます。「このフォルダは本社だけが更新し、支店は閲覧のみ」のように、フォルダごとに更新する拠点を決めておくとトラブルを減らせます。
少人数の支店から本社NASを使うなら、クラウド型リモートアクセスVPN
支店が数人規模で「本社NASを支店から開ければ十分」なら、方法2のリモートアクセスVPNが最も手軽です。クラウド型なら本社LANに専用機器を置くだけで、本社ルーターのVPN設定やポート開放、固定IPの取得が不要になります。
たとえば「だれリモVPN」では、専用機器「FLINT plus」を本社の社内LAN(LANポートまたは既存ルーター)に挿すだけで、支店や自宅のPCから本社NASに接続できます。機器はファイアウォールの内側に設置し、インターネットにVPNを晒しません。データは本社NASに集約したままで、支店のNASや同期の管理も不要です。導入前に、次の仕様を確認しておきましょう。
- 拠点間VPNではなく、PCごとに接続するリモートアクセスVPN:拠点のネットワーク同士を常時つなぐ拠点間VPNとしては案内されていません
- 接続できる端末は現在Windows PCのみ:Mac・iPhone・Androidからの接続は順次対応予定です
- 1アカウントで同時に接続できるのは1端末:1ユーザーにつき1アカウントが必要です
- 通信はVPNサーバーを経由:VPNを使わない場合と比べて通信速度は落ちます
料金は月額基本料金13,200円(機器レンタル代込み)+1ユーザーあたり990円で、支店の3人が使う場合は16,170円/月です。支店のPC台数が多い、拠点同士を常時つなぎたいといった場合は、方法1や方法3とあわせて検討してください。
まとめ
本社と支店でNASを共有する方法は、大きく次の4つです。
- ①拠点間VPN:常駐人数が多い支社向け。両拠点のVPN機器と管理体制が必要
- ②リモートアクセスVPN:数人規模の支店やテレワーク併用向け。データを本社NASに集約したまま始められる
- ③NASメーカーの同期機能:各拠点で大容量ファイルを速く扱いたい企業向け。競合対策が必要
- ④クラウドストレージ併用:一部のファイルを手軽に共有したい場合向け
どの方法でも、NASをインターネットに直接公開しないこと、同期とは別にバックアップを用意することが基本です。
支店から本社NASを安全に使うなら「だれリモVPN」
「ロリポップ!固定IPアクセス」が取次販売する「だれリモVPN」(提供:株式会社グローカルネット)は、専用機器「FLINT plus」を社内LANに挿すだけで使えるクラウド型リモートアクセスVPNです。
- ポート開放不要・固定IP不要:ファイアウォールの内側に設置し、インターネットにVPNを晒さない
- 既存ルーターの設定変更不要:VPN非対応ルーターでもOK
- AES-256/SHA-384の二重VPN暗号化・ノーログポリシー
- 機器費用0円・初月無料・契約期間なし・最短2日で導入(現在はWindowsのみ対応。Mac・スマートフォンは順次対応予定)
「支店の数人のために拠点間VPNを組むのは大げさ」という方は、まず初月無料でお試しください。
ポート開放なしで、社外からNASに安全にアクセスするなら
「だれリモVPN」は専用機器を社内LANに挿すだけのクラウド型リモートアクセスVPN。NASをインターネットに公開せず、外出先からいつものNASに接続できます。機器費用0円・初月無料で、お申込みから最短2日で始められます。
だれリモVPNの詳細を見る(初月無料)よくある質問(FAQ)
Q1. 本社と支店でNASを共有するには、拠点間VPNが必須ですか?
必須ではありません。支店が数人規模で本社NASのファイルを開ければよい場合は、支店のPCから本社LANに接続するリモートアクセスVPNで対応できます。ほかにNASメーカーの同期機能やクラウドストレージ併用もあり、支店の人数や共有したい社内リソースで選び分けます。
Q2. メーカーが違うNAS同士でも同期できますか?
Synology Drive ShareSyncはSynology NAS同士で使う機能で、同期するすべてのNASにSynology Drive Serverをインストールする必要があります。QNAPのHybrid Backup Syncは、同期先がQNAP NASの場合はRTRRサーバーまたはrsyncサーバーを有効にして使います。メーカー純正の同期機能を使う場合は、原則として同じメーカーのNASでそろえるのが前提です。
Q3. NAS同士を同期していれば、バックアップは不要ですか?
不要にはなりません。同期では、ファイルの削除やランサムウェアによる暗号化といった変更も、ほかの拠点に反映されることがあります。過去の状態に戻せるよう、スナップショットや世代管理のあるバックアップを同期とは別に用意してください。
Q4. だれリモVPNで本社と支店のネットワークを常時接続できますか?
だれリモVPNは、PCごとに社内LANへ接続するリモートアクセスVPNとして提供されており、拠点のネットワーク同士を常時つなぐ拠点間VPNとしては案内されていません。拠点同士の常時接続が必要な場合は、拠点間VPNを検討してください。支店のWindows PCから本社NASを使う用途であれば、本社の社内LANに専用機器を挿すだけで利用できます。接続できる端末は現在Windowsのみで、1アカウントで同時に接続できるのは1端末です。




