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NASのランサムウェア対策|乗っ取り・暗号化被害を防ぐ4つの対策と初動

NASのランサムウェア対策|乗っ取り・暗号化被害を防ぐ4つの対策と初動

使い方固定IPアクセス

「社内のNASがランサムウェアに暗号化されたら、業務が止まってしまう」——共有フォルダーやバックアップ先としてNASを使う中小企業にとって、ランサムウェアは現実的な経営リスクです。とはいえ「何から手を付ければいいのか」「バックアップだけで十分なのか」と迷う方も多いはずです。対策は1つでは足りず、侵入を防ぐ対策と、侵入されても被害を小さくして復旧する対策を組み合わせることが基本です。

この記事では、NASのランサムウェア対策を4つの層に分けて整理し、限られた手間で取り組む優先順位、Synology・QNAP・ASUSTORの公式推奨機能、そして被害に気づいたときの初動と相談先までを解説します。そもそもNASに社外から接続する方法の選び方は、NASに外部からアクセスする4つの方法の比較で詳しくまとめています。


NASがランサムウェアに狙われる理由

ランサムウェアとは、端末やサーバーのデータを暗号化して使えない状態にし、元に戻すことと引き換えに金銭(身代金)を要求する不正プログラムです。最近はデータを盗み出して「公開する」と脅す二重恐喝の手口も多く、暗号化されなくても被害が発生します。

被害は高止まりしており、中小企業も例外ではない

IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの脅威の1位が「ランサム攻撃による被害」で、11年連続でランクインしています。警察庁の発表によると、国内のランサムウェア被害の報告件数は2025年(令和7年)に226件で、2022年以降は年200件前後の高い水準が続いています。2025年上半期には、中小企業の被害が半期で77件と過去最多になりました。

警察庁は、VPN機器などインターネットに露出した機器からの侵入が多いとしています。狙われるかどうかは、会社の規模よりも「外から入れる入口があるか」で決まります。

NASは「データが集まり、外から届きやすい」機器

NASが狙われやすいのは、次の2つの性質が重なるからです。

実際に、QNAP・ASUSTORなどのNASを狙った「eCh0raix」「Qlocker」「DeadBolt」といったランサムウェアの被害が各メーカーの公式アドバイザリで報告されてきました。ASUSTORもDeadBoltへの対応としてADM(ASUSTOR NASのOS)の緊急アップデートを配布しています。個々の事例の手口と、ポート開放がなぜ危険なのかはNASのポート開放が危険な理由とランサムウェア被害事例で詳しく解説しているので、この記事では「では、どう守るか」に絞って説明します。


NASのランサムウェア対策は4つの層で考える

NASのランサムウェア対策は、目的ごとに次の4つの層に分けると整理しやすくなります。どれか1つで完璧に守ることはできないため、上の層で侵入を防ぎ、下の層で被害を小さくするという多層防御の考え方をとります。

層 目的 主な対策
① 侵入させない 攻撃者がNASに届く入口をなくす ポート開放・UPnPの停止、外部アクセスはVPN経由にする
② 認証と更新を固める 入口に届いても突破させない ファームウェア・アプリの更新、admin無効化、多要素認証、自動ブロック
③ 被害を限定する 侵入されても暗号化される範囲を狭める 共有フォルダーの権限の最小化、スナップショット
④ 復旧できる状態を保つ 暗号化されても業務を戻せるようにする NAS本体と切り離したバックアップ、復元テスト

以下、層ごとに具体的な対策を見ていきます。


対策1:侵入させない——NASをインターネットに公開しない

最も効果が大きいのが、NASをインターネットから直接届く場所に置かないことです。どれだけパスワードを強くしても、NASの管理画面やサービスが公開されていれば、未修正の脆弱性を突かれる可能性は残ります。入口そのものをなくすことが、他のどの対策よりも優先されます。

ポート開放とUPnPを点検する

まず、ルーターの管理画面でポートフォワーディング(ポート開放)の設定を確認し、NASへ転送している設定があれば外部アクセスの手段を見直したうえで無効化します。あわせて、ルーターとNASの両方で**UPnP(機器がルーターに自動でポートを開けさせる機能)**の状態も確認してください。設定した覚えがなくても、UPnPによってNASが公開されていることがあります。

QNAPは公式の「QNAP NASセキュリティガイド」で、UPnP・DMZ・ポートフォワーディングを無効にすることを推奨しています(2026年10月時点の公式情報)。他のメーカーでも、NASを直接インターネットに公開しないことが基本的な考え方です。

外出先からの利用はVPN経由にする

外からNASを使う必要がある場合は、NASを公開する代わりにVPN(暗号化された仮想の専用線)で社内LANに入ってからNASを使う構成にします。ただし、社内にVPNサーバーを立てる方式ではVPN用のポートを開けることになり、そのVPN機器が新たな入口になります。警察庁が侵入経路として挙げるのもVPN機器です。VPN機器を使う場合の更新や認証の注意点は、VPN機器の脆弱性対策を確認してください。メーカーごとの外部アクセス手段の違いは、QNAPならQNAP NASに外部からアクセスする方法で比較しています。

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対策2:更新と認証を固める——入口に届いても突破させない

NASを公開していなくても、社内のPCが感染してそこからNASに到達されることがあります。そのため、NAS自体の「守り」も固めておく必要があります。

ファームウェアとアプリを最新に保つ

NASのランサムウェア被害の多くは、既知の脆弱性を修正しないまま使っていた機器で発生しています。NASのOS(SynologyはDSM、QNAPはQTS/QuTS hero、ASUSTORはADM)と、インストールしているアプリは常に最新に保ちます。自動更新を設定できる場合は有効にし、更新の通知メールが担当者に届くようにしておくと漏れを防げます。

管理者アカウントと認証を見直す

メーカーごとの公式推奨機能

主要メーカーは、ランサムウェア対策としてそれぞれ次のような機能を案内しています(2026年10月時点の各社公式情報)。名称や対応状況は機種・OSのバージョンによって異なるため、お使いの製品の公式ページで確認してください。

項目 Synology QNAP ASUSTOR
ログイン保護 Secure SignIn 多要素認証、アクセス保護(IP/アカウント) ADM Defender(自動ブラックリスト)
設定・状態の点検 Security Advisor(マルウェア・脆弱性・異常なログインをスキャン) Security Center、Malware Remover —
スナップショット Snapshot Replication(Btrfsボリュームが必要、イミュータブルスナップショットは対応モデルのみ) スナップショット(一部シリーズは非対応) Snapshot Center(Btrfs)
バックアップの考え方 3-2-1バックアップを推奨 3-2-1バックアップを推奨(Hybrid Backup Syncなど) 3-2-1バックアップを推奨(MyArchiveなど)

Security AdvisorやSecurity Centerのような点検機能は設定の弱点を一覧で示してくれるため、IT専任者がいない会社でも、まず一度実行して指摘された項目から直していくのがおすすめです。


対策3:被害を限定する——権限とスナップショット

侵入を100%防ぐことはできない前提に立ち、「感染しても暗号化される範囲を狭くする」ための対策です。

共有フォルダーの権限を最小限にする

ランサムウェアは、感染したPCやアカウントが書き込めるファイルを暗号化します。全員が全フォルダーに書き込める状態では、1台のPCの感染が社内のデータ全体に広がりかねません。

スナップショットで「感染前」に戻せるようにする

スナップショットは、ある時点のファイルの状態を記録しておく機能です。ファイルが暗号化されても、感染前の時点を選んで戻せるため、ランサムウェア対策として各メーカーが推奨しています。

スナップショットを使うときは、次の点を押さえておきます。


対策4:復旧できる状態を保つ——NASと切り離したバックアップ

スナップショットは、NASの中に保存されています。そのため、NAS本体の故障や、管理権限を奪われてスナップショットごと削除された場合には復元できません。スナップショットはバックアップの代わりにはならないと考え、NASとは別の場所にもデータを残します。

3-2-1バックアップを基本にする

Synology・QNAP・ASUSTORはいずれも、3-2-1バックアップ(データを3つ持ち、2種類の媒体に保存し、1つは別の場所に置く)を推奨しています。たとえば、NAS本体・別の外付けHDDや2台目のNAS・クラウドやオフサイトという組み合わせです。

ランサムウェア対策として特に重要なのは、バックアップ先をふだんはNASや社内ネットワークから切り離しておくことです。常時つながったままの外付けHDDは、NASと一緒に暗号化される可能性があります。JPCERT/CCも、被害を受けた際にはバックアップを保護・切り離すことを初動対応として挙げています。

復元できるかを定期的に試す

いざというときに戻せなかった、という事態を防ぐため、定期的に実際にファイルを復元して手順と所要時間を確認しておきます。どのデータから戻すかを決めておくと、被害時の判断も早くなります。


4つの対策の優先順位

限られた時間と予算で取り組むなら、効果の大きい順に次のように進めるのが現実的です。

優先度 対策 効果 手間・コスト
1 NASをインターネットに公開しない(ポート開放・UPnPの停止、外部アクセスはVPN経由) 大(入口をなくす) 低〜中(外部アクセスの手段を見直す必要あり)
2 ファームウェア・アプリの更新、admin無効化、多要素認証 大 低(設定変更のみ)
3 NASと切り離したバックアップ(3-2-1)と復元テスト 大(最後の砦) 中(媒体・運用ルールが必要)
4 スナップショットの自動取得 中〜大(すばやく戻せる) 低〜中(対応機種・容量の確認が必要)
5 共有フォルダーの権限の最小化 中(被害範囲を狭める) 中(フォルダー設計の見直し)

最初の2つは今日からでも取り組めます。特に「外出先から使いたいからポート開放している」という場合は、外部アクセスの手段をVPN方式に切り替えることが、最も効果の大きい一歩になります。

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被害に気づいたときの初動

ファイルが開けない、拡張子が変わっている、身代金を要求するメッセージが置かれている——こうした兆候に気づいたら、慌てて操作を重ねる前に、次の流れで対応します。JPCERT/CCの「侵入型ランサムウェア攻撃を受けたら読むFAQ」は、対応の方針として被害範囲を把握して被害の最小化を図る・侵入経路を塞ぐ・バックアップから復旧するの3つを示しています。

1
ネットワークから隔離する:被害を受けたNASや感染が疑われるPCを社内ネットワークから切り離し、被害の拡大を防ぎます。接続中のバックアップ先も切り離して保護します。
2
被害範囲を確認し、記録を残す:どのフォルダー・機器が影響を受けたか、いつ気づいたか、表示されたメッセージなどを記録します。NASのログも調査の手がかりになります。
3
警察・専門機関に相談する:都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口へ通報・相談します。技術的な相談はIPAの情報セキュリティ安心相談窓口やJPCERT/CCも窓口になっています。
4
侵入経路を塞いでから復旧する:管理者パスワードの変更、ポート開放の停止、ファームウェア更新などで原因を解消してから、スナップショットやバックアップで復元します。原因が残ったまま戻すと、再び被害に遭うおそれがあります。

身代金は支払わない

JPCERT/CCは、身代金の支払いを推奨しない理由として、暗号化されたファイルが復元される保証がないこと、被害の原因は解消されないこと、別の攻撃被害を受けるおそれがあることを挙げています。復号ツールが公開されている場合は、欧州刑事警察機構(Europol)などが運営する「No More Ransom」で確認できますが、一般に復号は困難とされており、復旧の本命はバックアップです。

なお、個人情報が漏えいした、またはそのおそれがある場合は、一定の事案について個人情報保護委員会への報告等が義務付けられています。顧客情報を保存していたNASが被害に遭った場合は、この点も確認してください。


外出先からNASを使うなら「公開しない」VPN方式を

最も効果が大きい対策はNASをインターネットに公開しないことですが、テレワークがある会社では「外からNASに入れないと仕事にならない」のも現実です。そこで選択肢になるのがクラウド型リモートアクセスVPNです。社内に置いた専用機器が社内側からクラウドのVPNサーバーへ接続を張る方式なので、ポート開放が不要で、外部から接続を受ける入口を自社で管理する必要もありません。

VPN経由にしても、対策2〜4(更新・認証、権限とスナップショット、バックアップ)は引き続き必要です。「入口をなくす」ことと「侵入されても戻せる」ことをセットで整えましょう。ASUSTOR製NASをお使いの場合の外部アクセス手段は、ASUSTOR NASに外部からアクセスする方法も参考にしてください。


まとめ

NASのランサムウェア対策は、次の4つの層を組み合わせて考えます。

被害に気づいたら、ネットワークから隔離し、警察や専門機関に相談したうえで、原因を塞いでから復旧します。身代金は支払わず、バックアップからの復旧を前提に備えておくことが大切です。


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よくある質問(FAQ)

Q1. NASのスナップショットがあれば、バックアップは不要ですか?

不要にはなりません。スナップショットはNAS本体の中に保存されるため、NASの故障や、管理権限を奪われてスナップショットごと削除された場合には復元できません。スナップショットは「すばやく戻すための手段」、NASと切り離したバックアップは「最後の砦」として、両方を用意することをおすすめします。

Q2. ポート開放をしていなければ、NASがランサムウェアに感染することはありませんか?

リスクは大きく下がりますが、ゼロにはなりません。社内のPCがメールなどから感染し、そのPCがアクセスできるNASの共有フォルダーが暗号化されることがあります。ファームウェアの更新や多要素認証に加え、共有フォルダーの権限を絞る、NASと切り離したバックアップを持つといった対策を組み合わせてください。

Q3. NASがランサムウェアに暗号化されたら、まず何をすればいいですか?

まず、被害を受けたNASや感染が疑われるPCを社内ネットワークから切り離し、接続中のバックアップ先も切り離して保護します。そのうえで被害範囲を記録し、都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口へ通報・相談してください。IPAの情報セキュリティ安心相談窓口やJPCERT/CCも相談先になります。侵入経路を塞いでから、スナップショットやバックアップで復旧します。

Q4. 身代金を払えばデータは戻ってきますか?

戻る保証はありません。JPCERT/CCは、復元される保証がないこと、被害の原因が解消されないこと、別の攻撃被害を受けるおそれがあることから、支払いを推奨していません。復号ツールが公開されているかは「No More Ransom」で確認できますが、一般に復号は困難なため、バックアップから復旧できる備えが重要です。

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