「在宅勤務中に社内プリンターで印刷したい」「外出先から複合機に印刷を送っておきたい」――リモートワークが日常化した今、こうしたニーズは増えています。
VPN経由で社内ネットワークに接続すれば、自宅や外出先からでも社内プリンター・複合機に印刷を送ることができます。ただし、プリンタードライバーの設定やIPアドレスの確認など、いくつかの手順を踏む必要があります。この記事では、手順・注意点・トラブル対処法まで網羅的に解説します。
目次
- 社外から社内プリンターに印刷するための基本的な考え方
- 印刷方法の選択肢と比較
- 方法①:VPN経由でネットワークプリンターに直接印刷する
- 方法②:クラウドプリントサービスを使う
- 方法③:リモートデスクトップ経由で印刷する
- プリンタードライバー設定とIPアドレス設定の詳細
- よくあるトラブルと対処法
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
1. 社外から社内プリンターに印刷するための基本的な考え方
プリンターは社内ネットワーク(LAN)の中にあるため、自宅PCからはインターネット経由で直接アクセスできません。
この壁を越えるには、主に以下の3つのアプローチがあります。
- VPN接続:社内LANに仮想的に参加し、プリンターに直接アクセスする
- クラウドプリント:プリンターをクラウドサービスに登録し、クラウド経由で印刷ジョブを送る
- リモートデスクトップ経由:社内PCにリモート接続し、その社内PCから印刷する
それぞれの方法に得意・不得意があるため、自社環境に合ったものを選ぶことが重要です。
2. 印刷方法の選択肢と比較
| 比較項目 | VPN+ネットワーク印刷 | クラウドプリント | リモートデスクトップ経由 |
|---|---|---|---|
| 追加費用 | VPN代のみ | サービスによる(無料〜有償) | VPN代+社内PCの常時起動電気代 |
| 対応プリンター | ネットワーク対応プリンター全般 | クラウドプリント対応機種のみ | 社内PCに接続されているプリンター |
| 設定の手間 | やや高い(ドライバ・IP設定) | 中程度(初期登録必要) | 低い(既存設定そのまま) |
| 印刷速度 | 速い(直接送信) | サービスによる | 普通 |
| 社内PC常時起動 | 不要 | 不要 | 必要 |
| 対応OS | Windows/Mac(ドライバ次第) | ブラウザ対応なら広い | 接続元は問わない |
| セキュリティ | 高い(VPN暗号化) | サービス次第 | 高い(VPN+RDP) |
| 機能制限 | ほぼなし(全機能利用可) | 基本印刷のみのことも | 社内PCの機能をそのまま使える |
3. 方法①:VPN経由でネットワークプリンターに直接印刷する(推奨)
もっとも汎用性が高く、企業での利用に適した方法です。VPNで社内LANに接続した状態で、自宅PCにプリンタードライバーをインストールし、社内プリンターのIPアドレス宛に印刷ジョブを送ります。
前提条件の確認
この方法を使うには以下の環境が必要です。
- 社内プリンター・複合機が有線LANまたは無線LANで社内ネットワークに接続されていること
- 社内プリンターにプライベートIPアドレスが固定で割り当てられていること(DHCPで自動取得だとIPが変わることがある)
- VPN接続環境があること
- 自宅PCに対応するプリンタードライバーがインストール可能であること
手順(ステップ形式)
【STEP 1】社内プリンターのIPアドレスを確認する
社内プリンターに割り当てられているプライベートIPアドレス(例:192.168.1.50)を確認します。確認方法はプリンター本体の操作パネルまたは設定印刷から行えます。
- プリンター本体の操作パネルを開く
- 「設定」→「ネットワーク設定」→「ネットワーク情報を印刷」を選択する
- 印刷されたレポートの「IPアドレス」欄を確認する
操作パネルがない機種(小型プリンター等)は、プリンター付属のユーティリティソフトやプリンターのWebインターフェースから確認できます。
【STEP 2】プリンターに固定IPアドレスを設定する
VPN経由での印刷では、プリンターのIPアドレスを固定しておくことが重要です。DHCPで自動取得の場合、ルーターの再起動などでIPアドレスが変わり、接続できなくなるトラブルが起きます。
固定IPの設定方法は機種によって異なりますが、一般的には以下のいずれかから設定できます。
- プリンター本体の操作パネル(「ネットワーク設定」→「TCP/IP設定」→「IPアドレス設定」を「手動」に変更)
- Webブラウザでプリンターの管理ページにアクセスして設定(
http://[プリンターのIPアドレス]にアクセス)
【STEP 3】自宅PCにVPNクライアントをインストールして接続する
社内環境に合ったVPNクライアントをインストールし、VPN接続を確立します。
【STEP 4】自宅PCにプリンタードライバーをインストールする
VPN接続が確立された状態で、以下のいずれかの方法でドライバーをインストールします。
- メーカーサイトから手動インストール:Canon・EPSON・brother・Ricoh等のメーカー公式サイトから機種名でドライバーをダウンロードし、インストーラーを起動。接続方法に「ネットワーク(TCP/IP)」を選び、プリンターのIPアドレスを入力する。
- Windowsの「プリンターの追加」から手動追加:「設定」→「プリンターとスキャナー」→「デバイスの追加」→「手動で追加する」→「TCPまたはIPアドレスを使ってプリンターを追加する」を選択し、IPアドレスを入力する。
【STEP 5】テスト印刷で動作確認する
- VPN接続を確立した状態で、テスト文書を開く
- 印刷メニューからSTEPで追加したプリンターを選択する
- 「印刷」を実行して、社内プリンターから出力されることを確認する
【STEP 6】印刷タイミングと機密書類の管理に注意する
リモートから印刷ジョブを送ると社内プリンターから即時出力されます。機密文書は放置リスクがあるため、社内スタッフへの取り出し依頼や「認証印刷(PIN印刷)」機能の活用を検討してください。
4. 方法②:クラウドプリントサービスを使う
VPN環境が整っていない場合や、手軽に試したい場合の選択肢として、クラウドプリントサービスがあります。
主なクラウドプリントサービス
| サービス名 | 概要 |
|---|---|
| 印刷キング | アップロードしたファイルをコンビニや提携プリンターで印刷するサービス |
| コンビニ印刷 | セブン-イレブン、ファミリーマート等のネットワークプリントサービス |
| 複合機メーカーのクラウドサービス | Ricoh「Ricoh Cloud Connector」、Canon「uniFLOW Online」等 |
クラウドプリントの注意点
機種の対応確認が必須:社内の複合機がクラウドプリントサービスに対応しているかどうかを確認する必要があります。対応機種でない場合は使用できません。
セキュリティポリシーの確認:印刷ジョブがクラウドサーバーを経由するため、機密情報を含む文書の送信には注意が必要です。サービスのデータ管理ポリシーを確認してください。
コスト面:法人向けのクラウドプリントサービスは月額利用料が発生するものが多くあります。
5. 方法③:リモートデスクトップ経由で印刷する
VPN接続後に社内PCをリモートデスクトップで操作し、社内PCからプリンターに印刷する方法です。
メリット:自宅PCへのドライバーインストール不要。社内PC設定済みの環境をそのまま使えるため、両面印刷やステープルなど機器の全機能が利用可能。
デメリット:社内PCを常時起動しておく必要があり、VPN+RDPの2段階接続が必要。
手順:VPN接続→mstscで社内PCに接続→印刷したいファイルを開き通常通り「印刷」を実行する。
6. プリンタードライバー設定とIPアドレス設定の詳細
IPアドレスの確認方法(主要メーカー別)
| メーカー | 確認手順 |
|---|---|
| Canon | 操作パネル→「設定/登録」→「環境設定」→「ネットワーク」→「IPv4設定の確認」 |
| EPSON | ホーム→「設定」→「全般設定」→「ネットワーク設定」→「ネットワーク設定情報を印刷」 |
| brother | 「メニュー」→「Network」→「TCP/IP」→「IPアドレス」 |
| Ricoh | 「設定」→「機器設定」→「機器情報」→「機器設定情報」 |
WindowsでのTCP/IPポート追加手順
- 「コントロールパネル」→「デバイスとプリンター」→「プリンターの追加」をクリック
- 「TCPまたはIPアドレスを使ってプリンターを追加する」を選択
- ポートの種類「TCP/IPデバイス」を選び、社内プリンターのIPアドレスを入力
- 「次へ」でデバイスを検出し、ドライバーを選択して「完了」
注意:VPN接続が切れた状態では印刷エラーになります。印刷前に必ずVPN接続を確認してください。
ファイアウォールでポート9100がブロックされている場合は、IPP(Internet Printing Protocol)のポート631を利用する方法もあります。Windowsのプリンター追加で「IPP」を選択し、http://[プリンターのIP]/ipp/print などのURLを指定してください(機種によってURLが異なるためマニュアルを確認)。
7. よくあるトラブルと対処法
| トラブル | 考えられる原因・対処法 |
|---|---|
| VPN接続しているのにプリンターが検出されない | IPアドレスが変わった可能性→固定IP設定を確認。VPN接続切れを再確認。ファイアウォールがポート9100/631をブロックしていないか確認。VPNのスプリットトンネリング設定も確認 |
| プリンタードライバーが見つからない | メーカー公式サイトでOS(Windows 10/11)対応版を検索。旧機種はWindows標準PCLドライバー(汎用)で代替できる場合あり |
| カラー・両面印刷などの機能が使えない | 汎用ドライバーでは固有機能が制限される。メーカー純正ドライバーをインストールし直すと解消するケースが多い |
| 印刷キューに残ったまま止まる | 「プリンターとスキャナー」→「印刷キューを開く」で滞留ジョブをキャンセル。改善しない場合はPrint Spoolerサービスを再起動し、VPN接続を確認してから再試行 |
| 自宅プリンターに印刷されてしまう | 印刷ダイアログで社内プリンターを明示的に選択。デフォルトプリンターが自宅用のままになっているケースが多い原因 |
8. よくある質問(FAQ)
Q1. VPNなしで社内プリンターに印刷できますか?
A. セキュリティを確保した形では推奨できません。VPNなしでプリンターに印刷しようとすると、ルーターでプリンターへのポートを外部公開するか、クラウドプリントサービスを使う形になります。前者はプリンターの管理画面が外部から丸見えになるリスクがあり、後者は機種対応と情報管理ポリシーの確認が必要です。VPN経由が最もセキュアな方法です。
Q2. 社内複合機のスキャン機能を社外から使えますか?
A. VPN接続中であれば、社内のファイルサーバーへのスキャン保存が有効な場合があります。ただし機種や設定によって対応範囲が異なるため、IT担当者または複合機メーカーのサポートに確認することをおすすめします。
Q3. 自宅からFAXを送ることはできますか?
A. VPN経由で複合機に接続できれば、PCFAXまたはFAX送信機能対応機種ではパソコンからFAX送信が可能です。受信FAXを確認するには複合機の管理ページへのアクセスか、FAXをメール転送する設定を事前に行っておく必要があります。
Q4. 印刷した書類のセキュリティはどう管理すればいいですか?
A. リモートから印刷すると誰でも取れる状態で出力されます。機密書類には「認証印刷(PIN印刷)」機能付きの複合機を活用し、本人が社内で取り出す運用が推奨です。この機能がない場合は社内スタッフへの依頼か、機密文書のリモート印刷を制限するルール設定が現実的です。
Q5. MacやiPhoneからも社内プリンターに印刷できますか?
A. Macは、VPN接続後にシステム設定→「プリンターとスキャナー」からIPアドレスで追加可能です(対応ドライバーが必要)。多くのメーカーはMac対応ドライバーを提供しています。iPhoneはAirPrint対応複合機とVPN接続の組み合わせで利用できますが、スマートフォン側のVPN対応確認が別途必要です。
9. まとめ
社外から社内プリンター・複合機で印刷する方法をまとめます。
| 方法 | 向いている状況 |
|---|---|
| VPN+ネットワーク印刷 | セキュリティ重視・複数人が利用・あらゆるプリンターに対応したい |
| クラウドプリント | クラウド対応複合機がある・VPNを用意できない・手軽に試したい |
| リモートデスクトップ経由 | プリンタードライバーを自宅に入れたくない・社内PCを常時起動できる |
リモート印刷で最もセキュリティが高く汎用性がある方法は「VPN経由でネットワークプリンターに接続する」方法です。IPアドレスの確認とドライバーインストールに少し手間がかかりますが、一度設定してしまえば次回以降はVPN接続後すぐに印刷できます。
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VPN接続が確立された後は、この記事で解説したプリンタードライバーの設定を行うだけで、自宅から社内プリンターへの印刷が実現できます。テレワーク中の「印刷できない」という困りごとを、シンプルな手順で解決してください。



