VPN型固定IPサービスとは、事業者のVPNサーバーを経由して通信することで、いま使っている回線を変えずに固定グローバルIPアドレスを使えるようにするサービスです。
固定IPアドレスを手に入れる方法は大きく2つあり、それぞれ性格がまったく違います。
| プロバイダ型(回線オプション) | VPN型 | |
|---|---|---|
| 固定IPが付く単位 | 回線 | 端末・利用者 |
| 使える場所 | その回線から接続したときだけ | どこから接続しても同じ |
| 導入 | プロバイダ契約の変更・工事が必要な場合あり | 回線はそのまま、アプリを入れるだけ |
| 料金の目安 | 月額1,000〜3,000円程度 | 月額500〜1,100円程度 |
| 向いているケース | 本社に固定IPを1つ置きたい | テレワークがある/複数拠点/すぐ使いたい |
つまり、オフィスに全員が出社する前提ならプロバイダ型、社員が自宅や出張先からも働くならVPN型、というのが基本的な使い分けになります。
この記事では、VPN型の仕組みと向き不向き、そして選ぶときに見るべきポイントを整理します。
VPN型固定IPサービスの仕組み
VPN型のサービスでは、端末に入れた専用アプリ(またはVPNクライアント)が、事業者のVPNサーバーとのあいだに暗号化された通信路(トンネル)を作ります。
インターネットへの通信はいったんこのトンネルを通り、事業者のVPNサーバーから外に出ていきます。そのため、接続先のSaaSやWebサイトから見えるアクセス元IPアドレスは、自宅の回線でもモバイル回線でも、サーバーに割り当てられた同じ固定グローバルIPアドレスになります。
ここがプロバイダ型との決定的な違いです。プロバイダ型は「その回線から出ていく通信」に固定IPが付くため、自宅から接続すれば自宅のIPアドレス、出張先から接続すればそのホテルのIPアドレスになってしまいます。VPN型は端末単位なので、働く場所が変わってもアクセス元IPアドレスが変わりません。
なぜ「同じIPアドレスであること」が重要なのか
SaaSやサーバーのIP制限は「許可リストに載っているIPアドレスからのアクセスだけ通す」という仕組みです。
アクセス元IPアドレスが人や場所によってバラバラだと、許可リストが際限なく増え、しかも動的IPなら番号が変わるたびに更新が必要になります。
詳しくはIP制限(IPアドレス制限)とは?をご覧ください。
VPN型が向いているケース・向かないケース
向いているケース
- テレワークや出張がある —— 社員がどこから働いてもアクセス元IPアドレスが揃います
- SaaSのIP制限を使いたい —— Microsoft 365、kintone、Salesforce などの許可リストに登録するIPアドレスが1つで済みます
- 回線を変えたくない・変えられない —— いま契約している回線・プロバイダをそのまま使えます
- すぐに使い始めたい —— 工事や事業者登録が不要なため、申し込んだ当日から使えるサービスが多くあります
- 拠点が複数ある —— 拠点ごとに固定IPオプションを契約するより安く済むことが多くあります
向かないケース
- 外部からの着信(ポート開放)が必要 —— 自宅サーバーの公開やWebカメラの遠隔確認など、インターネット側から自分に接続してもらう用途は、サービスによって可否が分かれます。申し込み前に必ず確認してください(ポート開放とは?)
- 拠点まるごとを固定IPにしたい —— 端末ごとにアプリを入れる方式のため、拠点内の全機器を一括で固定IP化したい場合は、拠点にVPNルーターを置く構成かプロバイダ型が向きます
- 通信の経路をすべて自社で握りたい —— 通信が事業者のサーバーを経由するため、経路をすべて自社管理下に置きたい要件がある場合は設計を分けて検討します
VPN型固定IPサービスの選び方6つのチェックポイント
1. VPNプロトコル
現在の主流はWireGuardです。実装が軽く、接続が速く、設定ファイルを読み込むだけで使えるのが利点です。古いOpenVPNやL2TP/IPsecのみのサービスは、速度と設定の手間で不利になります(WireGuardとは?)。
2. IPアドレスが専有か共有か
他社と共有されるIPアドレスでは、IP制限の用途に使えません。 「自社専用の固定IPアドレスが割り当てられるか」を必ず確認してください。個人向けVPNサービスの多くは共有IPのため、業務用途には向きません。
3. 同時接続数とライセンスの考え方
「1つの固定IPアドレスを何人で使えるか」はサービスによって大きく違います。1ライセンス=1台の同時接続とし、ライセンスを追加すれば同じIPアドレスを複数人で共有できる方式なら、登録するIPアドレスは1つのまま人数だけ増やせます。
4. 契約の柔軟性
人数の増減が読めない場合、ライセンスを1単位で増減できるか、最低契約期間の縛りがないかを見ます。年契約しかないサービスは、試して合わなかったときの損失が大きくなります。
5. 無料お試し期間
VPN型は通信が事業者のサーバーを経由するため、実際の速度は使ってみないとわかりません。無料お試しの有無と期間は、そのまま検証できる時間の長さになります。
6. ログ・ルーティングなどの運用機能
監査対応が必要な組織では、アクセスログの取得可否と保存期間が要件になります。また、一部の通信だけVPNを経由させるルーティング機能があると、業務影響を抑えて導入できます。これらが有償オプションか標準機能かで、実質的なコストが変わります。
料金の目安と比較
VPN型固定IPサービスの相場は、1ライセンスあたり月額500〜1,100円程度です。プロバイダ型の固定IPオプション(月額1,000〜3,000円程度)と比べると、1人あたりのコストは抑えやすい水準にあります。
国内の主要サービスの料金・無料期間・接続方式を並べた一覧表は、固定IPサービス5社比較|料金・速度・機能を一覧表で比較にまとめています。速度面が気になる場合は固定IPサービスで速度は遅くなる?VPN型固定IPとプロバイダ型を徹底比較もあわせてご覧ください。
ロリポップ!固定IPアクセスの位置づけ
ロリポップ!固定IPアクセスは、GMOペパボが提供するVPN型の固定IPアドレスサービスです。前章のチェックポイントに沿って整理すると、次のようになります。
| チェックポイント | ロリポップ!固定IPアクセス |
|---|---|
| VPNプロトコル | WireGuard |
| IPアドレス | 契約者ごとに専有 |
| 同時接続・ライセンス | 1ライセンス=1台。ライセンス追加で同じ固定IPを複数人・複数端末で共有可 |
| 契約の柔軟性 | ライセンスを1単位で増減可。契約期間の縛りなし |
| 無料お試し | 最大2ヶ月(1つ目の固定IP・上限10ライセンスまで) |
| ログ・ルーティング | 標準機能として提供 |
| 料金 | ライトプラン 月額490円(税込539円)/スタンダードプランは1ライセンスあたり月額450円(税込495円)・10ライセンスから |
回線工事もプロバイダ変更も不要で、オンラインで申し込みが完結し最短即日から使えます。
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VPN型固定IPサービスに関するよくある質問
一般的なVPNサービスと何が違いますか?
一般的な個人向けVPNサービスは、匿名性や地域制限の回避を目的にしており、多くの利用者で同じIPアドレスを共有します。VPN型固定IPサービスは逆に、**契約者ごとに専有の固定IPアドレスを割り当てて「身元を証明する」**ことが目的です。IP制限の許可リストに登録して使うため、共有IPでは成立しません。
VPNを経由すると通信は遅くなりませんか?
通信が事業者のサーバーを1回経由するぶんの影響はありますが、WireGuardを採用した国内サーバーのサービスであれば、通常の業務利用で問題になることは多くありません。ただし影響の度合いは回線やサーバーの所在地で変わるため、実測値が公開されているか、無料お試しで検証できるかを確認してください。
VPN型でもポート開放はできますか?
サービスによります。外部からの着信を受ける用途に対応していないサービスもあるため、自宅サーバーの公開やWebカメラの遠隔確認が目的なら、申し込み前に必ず可否を確認してください。
固定IPアドレスは何人まで共有できますか?
サービスの方式によります。1ライセンス=1台の同時接続とし、ライセンスを追加することで同じ固定IPアドレスを複数人が使える方式が一般的です。この方式なら、人数が増えてもSaaS側に登録するIPアドレスは1つのままです。
会社の回線を変えずに導入できますか?
できます。VPN型は端末にアプリを入れて接続する方式のため、いま契約している回線やプロバイダをそのまま使えます。回線工事や事業者登録も不要です。
まとめ
VPN型固定IPサービスは、回線を変えずに、どこから働いても同じ固定グローバルIPアドレスを使えるようにするサービスです。テレワークがある組織や、SaaSのIP制限を使いたい組織にとっては、プロバイダ型よりも素直に要件を満たせる選択肢になります。
選ぶときは、WireGuard対応か/IPアドレスは専有か/ライセンスを柔軟に増減できるか/無料お試しがあるか/ログ・ルーティングが標準かを確認してください。具体的なサービスの料金比較は固定IPサービス5社比較にまとめています。




